複合的思考と概念的思考
※生活的概念と科学的概念に対応している。
複合の段階の言葉に媒介された言語的思考を複合的思考と呼び、概念の段階の言葉に媒介された言語的思考を概念的思考と呼ぶ
複合的思考(生活的概念)
複合と呼ばれる段階では、それを構成する言葉の意味は、個々の具体的事物の間に実際に存在する客観的な事実関係に基づいて結合されており、言葉は脈絡のある明確な意味を持っている。しかし、この段階では、具体的事物間の結合は、様々な事実的関係により様々に一般化されるために、そこに階層性や体系性がないのが特徴である。複合の最高水準のものを前概念とか疑似概念と呼んでいるが、これがそう呼ばれる理由は、この水準の複合の持つ一般化が外見上は概念を思わせるが、その心理学的本性の点ではやはり複合であり、真の概念とは異なるからである。それは真の概念へと過渡的形式なのである。
概念的思考(科学的概念)
これに対して、概念と呼ばれる段階では、それを構成する言葉の意味は、対象の間に存在する単一の、本質的な特徴の抽出に基づいて結合されており、この本質的な特徴は、他の概念との階層的な関係によって規定されている。
例
概念的思考では、犬と鶏と小麦と庭木は生物という抽象化された、単一の本質的な特徴で結合され、ひとつにまとめられる。複合的思考では、これらはみな地主のペトロフのものであるということで、ひとつにまとめられる。一見すると同じまとまりが得られているが、その思考法則・思考原理は全く異なっているのがわかる。複合的思考では、やはりペトロフのものである穀物倉や馬車や金銀宝石なども、何の矛盾もなく上のグループに含まれるが、概念的思考では、これらは生物という本質的特徴をもたないので排除される。
ヴィゴツキーによると
「発達の過程において、これらの機能(注意、記憶、知覚、意思、思考など—引用者)はすべて複雑な階層的体系を形づくっている。この体系の中では思考の発達、概念形成の機能が中心的ないしは主導的な機能である。
参考