理解の探求マインドとコピペマインド
私は人の学習とマインドセットに関心があり、言葉にできるきっかけが多くなってきたのでまとめます。マインドセットとは人の考え方や物事の捉え方の束です。
人は学べます。学ぶことで物事を理解します。この理解のマインドセットが人によって思った以上に大きな違いがあり驚きました。
学習のマインドセットはしなやかマインドセットとかちこちマインドセットを提唱したDweck(2006)が有名です。同じように理解のマインドセットがあるようです。理解の探求マインドと、コピペマインドと仮に呼びます。 *日本の著書としては『マインドセット「やればできる! の研究』草思社 が有名です。
コピペマインド
このマインドでは目の前の状況に合わせ、うまくいった過去の記憶を思い出し、その時の方法を当てはめてみます。うまくいった過去の記憶はリスト化されていて、確度が高そうな順番から試してみます。解法のリストが少なくってくると焦り、ストレスを感じます。
一見あたりまえのようですが目の前の状況を印象で捉えます。言語化は難しく感じます。その印象が物事の適切な理解になっているかの検証はしません。また過去にうまくいった方法がなぜうまくいったのかの理解も薄い傾向があり、薄いという自覚はありません。
うまくいったと感じたら完了です。
・うまくいった過去の再現が関心事です。
・最低限の頭脳労働で済ませたいと考える傾向があります。
・状況の理解と、方法の理解について自分がどの程度理解しているかに無自覚な傾向があります。
・うまくいったという結果に強い関心をもちますが、うまくいく原因と結果の仕組みには漠然とした印象で捉えます。
・ある方法をすると、うまくいく結果になるという行動と結果の組み合わせで理解する傾向があります。これをひとつの解法としてうまくいったリストに加えます。ベストプラクティスのリストで具象的です。
・分かりやすいです。
・うまくいかないと焦り、物事に振り回されているという意識を呼び起こす傾向があります。
・ルーティンの状況に強く、早いです。
・新しい状況には打ちのめされがちです。
理解の探求マインド
このマインドでは基本的に探求するというマインドで物事に接します。象徴的な言葉は「ガチ勢」です。
目の前の状況を観察します。原因と結果の関係を頭の中で描き、構造と働きを推論します。
描いた推論が正しいかの検証を行い、状況を適切に観察できたかの検証をします。
観察して検証された状況に対して、うまくいく方法を考えます。うまくいった過去の方法を再現することもありますが、目の前の状況にフィットするように調整したり、もっとうまくいくような方法をあらたに試します。
思ったように動いたら、本当にうまくいったのかを検証します。からくり時計のように、それぞれの要素が噛み合っているか、理解が噛み合っているかの検証をします。
・目の前の状況の十分な理解が関心事です。
・十分な理解をしたいと考える傾向があります。
・状況の理解、方法の理解、結果の理解について自分がどの程度理解できているか意識しています。
・うまくいったという結果は関心事の一つですが、なぜうまくいったのか分からないと不安になります。うまくいく原因と結果の仕組みを理解できたという実感に心地よさを感じます。
・分かりにくいことが多いです。
・うまくいかないと理解できていないところがあったと状況の観察からやり直します。
・新しい状況や変化の激しい状況に強いです。
ふたつのマインドは人の中で混在する
コピペマインドと理解の探求マインドは一人の中で混在し、全方位に探求マインドを持つ人はほとんど少ないと思います。業務には関心があるけれど料理には興味が無い人がいれば、その反対の人もいます。
調味料は「さしすせそ」の順で入れると良いというテクニックがあります。煮物で、もし継ぎ足ししなければならないとしたら、どのように調味料を加えれば良いでしょう。分かりません。「さしすせそ」の順を崩した方が良い具材や料理もあるでしょう。私は「さしすせそ」の順で入れればよいという関心の強さですので、料理に対してはコピペマインドです。
コピペマインドの分野に対して、探求マインドを引き出すにはアナロジーが有効と思います。自分の得意分野で料理をたとえてみる、などですね。たとえや、アナロジーは理解しやすくなるだけでなく、探求マインドも引き出すと思います。
理解の探求マインドを感じた記事
しばやんの研究 (Study of Shibayan) - Qiita
*しばやんの研究 (Study of Shibayan)*
今まで自分が一緒に仕事した人で、最も凄いとおもったのは、しばやん(@shibayan) さんで、何回かご一緒させていただいているが、あらゆる面でなんであんなに出来るんだろう?と思う。彼と一緒に仕事をしていると、「つまる」ということがほぼ存在しない。問題解決にかかる時間がものすごく短くて、しばやんさんにとって30分つまると、相当はまっているという感覚らしい
しばやんさんは、問題解決がとてつもなく速い。一緒にやっていると、つまるという場面が存在せず、時間がかかっている場面でも、「つねに進捗している」感がある。
行動がすべて「意図」をもっており、「わからないけど、これが、うごかなかったから、この方法でやってみよう」といったような行き当たりばったりの解決は決して取らない。コードを速やかに読んで、わからない場合は、診断ログを自作して、それでログとシステムの振る舞いを観察して、意図をもった実験を繰り返して、問題に一歩一歩近づいていた。また、無駄な動きがすくなく、何回も同じようなことを試すようなことはしない。
「この理由わかる?」缶ビールを濡らした紙に包むと10分でキンキンに冷える?→話題のツイートを理科の先生が実験で検証 - Togetter
とある女性が投稿した「亡き父親のゲーム攻略メモ」を見てゲームを攻略するということ。彼はなにを解き、わたしはなにを辿ったか
あ🍎べさんのツイート: “父親が昔書いてたゲームの攻略メモがやばい… “
コピペマインドを感じた記事
お前は絶望的にプログラミングに向いてないから諦めて刺身にタンポポ乗せる仕事でもやってろ|古都こと
断絶
理解の探求マインドと、コピペマインドの人がチームを組んで物事に取りかかると、辛いです。関心の歩調を合わせられればよいのですが、なかなかできずに互いを非難することになるかもしれません。
補足
理解の探求マインドと、コピペマインドはすこし大げさな言葉かもしれません。日常的な言葉にすると、探究心とベストプラクティスでしょうか。