溢出効果(スピルオーバー)
漏出効果,拡散効果という。元来,公共経済学の分野での用語であり,公共サービスの便益が,給付を行なった公共体の行政区域を超えて拡散し,費用負担をしていない周辺の公共体もその便益を享受する現象であり,ある種の外部経済効果である。たとえば,公園,公共施設の便益が周辺に及ぶ場合のほか,河川の水質規制の強化が下流域の他の公共体にその便益が拡散する場合などがあげられる。最近では,技術開発の分野で,その効果が本来意図した業種を超えて他の関連業種にまで波及することを指していうこともある。
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道具の時代は重要なスピルオーバー効果ももたらしている。道具の制作工房には科学者、職工、熱心な好事家が集まり、新しいアイデアが活発に交換された。工房は、科学と技術の相互作用を円滑化する役割を果たしたと言えよう。カードウェルが指摘したように、「一七〇〇年までには近代技術の基礎ができていたと言って差し支えない。〝技術〟という言葉も一八世紀末までには生まれていたし、〝発明家〟という言葉も今日と同じ意味で理解されるようになっていた(94)」。となれば、なぜ産業革命はもっと早く起きなかったのか、ますます理解しがたくなってくる。
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