株式公開(IPO)
投資家の要望によって生じる機会
株式公開(IPO)
スティーブからの圧力は高まる一方で、いつ株式を公開できるのかとせっついてくる。まるで、それが最終的な詰めである、株式さえ公開できればすべてうまく行くと考えているんじゃないかと思えるほどだ。私の考えは違う。株式を公開すれば、すさまじい圧力がピクサーにのし掛かってくるだろう。小さなミスまでウの目タカの目で探されることになる。少しでもやり損なえば、やいのやいのと騒がれるはずだ。事態は好転するかもしれないが、裏目に出る可能性も高いのだ。
それに、エンターテイメントの会社という旗をいったん掲げたら、後戻りできない道を進むことになる。レンダーマンソフトウェアの販売をやめる、コマーシャルグループを廃止する、ウォールストリートをはじめとする世界に対し我々はエンターテイメントの会社だと発表する、映画の制作に資源を集中するなどの施策を進めることになるのだ。この道を進みはじめたら後戻りはできない。やりなおしなどできない。だから、資金的にも戦略的にも、精神的にも、万全を期す必要がある。『トイ・ストーリー』完成にむけてすさまじい圧力がかかっている状態で、それが可能だとはとても思えない。