支援
支援関係における7つの原則
支援を与える用意
支援を効果的に申し出て、提供し、受けとるために、ほかの活動から移行する能力や、支援したり、支援されたりといった体勢を整える能力もわれわれには必要である。
支援を受ける用意
支援を受ける容易にも問題が含まれている。というのも、支援は求めるか求めないかにかかわらず、提供される場合が多いからだ。もし、私が急に支援を申し出られたら、他人の主導権に対して反応し、一時的に低い位置(ワンダウン)に置かれたという感情に対処しなければならないだろう。提供された支援を本当に必要としていると突然気づいた場合でも、あるいはもっと悪いことに、実際は何の問題もないし、まったく必要がないのに、支援を求めていると見なされたという自分の気持ちにも対処しなければならない場合にも。
原則1 与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる。
1.支援を申し出たり、与えたり、受け入れたりする前に、自分の感情と意図をよく調べること
2.支援したいとか、支援されたいといった自分の欲求がわかるようになること
3.支援しようという努力が快く受け入れられなくとも、腹を立てないこと
原則2 支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる
4.支援を求める日とは気まずい思いをしているということを思い出す。だから、クライアントの本当の望みは何か、どうすれば最高の支援ができるかを尋ねること あなたがこうしたことをきちんと尋ねれば、クライアントは状況や意思をを少しはコントロールできるという気持ちになり、支援をより受け入れやすくなるだろう。必要とする支援をクライアントが得ているかどうか、ときどき確認しよう。そしてクライアントが支援を得る 必要性よりも、助けたいというあなたの必要性にとらわれすぎて、過剰な支援をしないように注意すること。
5.あなたがクライアントなら、何が役に立ち、何が役に立たないかというフィードバックを支援者に与える機会を探そう これ以上の支援を受け入れられないとき、支援者にどんなフィードバックをするかについても学ばなければならない。
原則3 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。
6.まずは調べてから、どんな支援の形が具体的に必要とされているかを推測すること 6.1.クライアントが必要としている具体的な知識や具体的なサービスという形で支援を与える専門家 6.2.クライアントの状態を診断し、処方薬や専門的なサービスを与える医師 6.3.実際に必要なものを診断し、共同で調べることによってクライアントを参加させ、情報をすべて打ち明けてもらえるほどの信頼関係を築くプロセス・コンサルタント
7.支援する状況が続く中で、あなたが演じている役割がまだ役に立つものかどうか、定期的に調べること
8.あなたがクライアントなら、もはや助けられないと感じたとき、恐れることなく支援者にフィードバックを与えよう
原則4 あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である
9.支援者としての役割の中では、人間関係に与えそうな衝撃によって、自分の言動をすべて評価すること
10.あなたがクライアントなら、やはり自分のあらゆる行動がメッセージを伝えていることを自覚すべきだ 自分の行動について認識し、人間関係に与える影響を考えよう。あなたは支援を承認しているだろうか。それとも賞賛しているだろうか。あるいは支援に抵抗していめるだろうか。それとも、積極的に支援を否定しているだろうか。支援者にフィードバックを与えているだろうか。
11.フィードバックを与えるときは、現実の姿の記述にとどめるようにし、判断は最小限に抑えること。
12.不適切な励ましは最小限にすること。
13.不適切な修正は最小限にすること。 間違いは頻繁に起こっているが害はない場合、支援者はそのつどミスを指摘するより、そのまま放っておいたほうがいい。間違いを自分で見つけることを覚えれば、クライアントは自信を得るのだ。間違いを指摘してほしいかどうかとクライアントに尋ねることは有益である。
原則5 効果的な支援は純粋な問いかけとともにはじまる
14.純粋な問いかけからつねに始めるべきである
15.求められた支援がどれほどお馴染みのものに聞こえても、これまで一度も聞いたことがない、まったく新しい要求だとして考えよう 状況を型にあてはめてしまうと、関係が築かれず、何の支援も与えられないというリスクが高まる。純粋な問いかけの鍵となるのは「自分の無知に気づく」という、奇妙な概念である。もし、あなたが自分の予想や憶測を調べるためだけに質問すれば、クライアントはそれを感じ取り、あなたの考え方へと誘導され、懸念をさらに打ち明けることはないだろう。自分の無知に気づき、質問に生じる先入観を最小限にするためには、本当に知らないことは何かと自問しなければならない。 関係が始まったばかりの頃に純粋な問いかけがもっとも効果的な理由は二つある。クライアントの地位を高めるためと、支援者が正しい情報を最大限に得られるようにするためだ。
原則6 問題を抱えている当事者はクライアントである
16.関係を築くまでは、クライアントの話の内容に関心を示しすぎないよう注意すること。
17.あなたがすべて知っていると思う問題とどれほど似ているようでも、それは他人の問題であって、あなたのものではないことを絶えず思い出そう ある問題を他人がどう感じているかについて、支援者が心から理解できることはありえない。他人は自分と異なった社会的状況に生きており、異なった性質を持っているからだ。同情や共感を覚えても、他人にこういっていいという理由にはならない。「私も同じ問題をかかえていました。だからあなたもこんなふうにすべきです」。何が最も効果的かを決められるのは結局のところ、クライアントだけだということを支援者は覚えておくべきだ。
原則7 すべての答えを得ることはできない
私は支援者の役割を演じているから、自分の経験が解決に役立つと考えたい気持ちに駆られるのだ。自分が博識者だと信じ込んでしまう罠に陥り、解決策を作り上げてしまう。それが期待されていると感じるからである。しかし、そうした態度はほぼすべての場合、役に立たない助言となるだけだ。ときには、正しい選択肢が「問題を分かち合う」ことだと私は学んだのである。
18.支援の対象となる問題を分かち合うこと。 自分で認めたいと思う以上に気づいたのだが、誰かを支援すべき状況に置かれたとき、次に何をすべきか突然わからなくなったことがある。こうした事態になった場合、一番いい方法はクライアントにこう言うことだ。「今の時点では私も行き詰まっています。お役に立つためには次に何をすべきかわかりません」。これによって、クライアントは力を与えられ、それが取り組むべき自分の問題であるという事実を認識するだろう。
出典
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連絡を取るべき人は誰か
私たちはいくつかのプロジェクトに取り組んできたが、そこには弱い立場の人が信頼できる援助者を探せるよう手助けをするという一貫したテーマがある。例として、いじめの問題を取り上げてみよう。ご存知のように、オンライン上でのいじめは増える一方だ。そんないじめを目撃したり経験したりしていない幸運な人のために言えば、残念ながら、投稿されるメッセージや画像の一部はどうしようもなくたちが悪いと言わざるをえない。それに対処すべくフェイスブックでは、ユーザーがいじめを報告できる特別な手段を設けている。もちろん、言葉や画像それ自体がフェイスブックの定める方針に反していなければ──意地悪な発言や当てこすりがすべて憎悪表現に該当するわけではない──、その不愉快な内容を容易には削除できない。表現の自由は厳重に守られている。しかしフェイスブックは、いじめを受けていることを報告した人に、他者の助けを求めるように促せる。「他者」とは、被害者を援助できる人、つまり信頼できる身近な人のことだ。だが重要な問題は、効果的に働きかけるにはどうすればいいかということだ。
では、仮にあなたがいじめられているとしよう。あなたはいじめが終わってほしいと願うだろうし、自分でやめさせられないのならば、他者の助けをありがたく思うはずだ。少なくとも一般論で考えればそうだろう。だがそれが現実となると──顔の見えない企業ではなく生身の人間に助けを求めなければならないとなると──、話は急にややこしくなる。大勢の人のなかから誰を選び出して連絡を取るべきか? 気持ちをわかってくれるという点で、信頼できるのは誰か? そして、おそらく最も重要なのは、助けを求めたときに煩わしく思わず、自分を助けたいと思ってくれるという意味で誰を信頼できるか、だろう。こうした問いに対する答え次第で、悩んでいるティーンエイジャーが助けを求めて誰かに接触するか、ただボタンを押して画面のスイッチを切るか、その後の行動がまったく変わってくる。
私は、同僚のピアカルロ・ヴァルデソロと、ベハーのチームの幹部であるジェイク・ブリルとともに、ユーザーがよい答えを見つけるのをフェイスブックがどうやって手助けするかという課題に取り組んでいる。鍵になるのは類似性を感じさせることではないかと私たちは考えている。前述した私の研究室での実験では、二人の人間をつなげる類似性のしるしが何だろうとわずかでもあれば、互いに助け合おうとする意欲が劇的に高まった。相手との共通点に気づけば、それだけで人は強い絆を感じるだけでなく、互いへの思いやりも深まる。だから、感情的にまいっている人──誰かに助けてほしいのに、無視されやしないかと思っている人──を助けるには、類似性に基づいて、信頼すべき人の選択肢を仕分けるのが有望な方法だ。何しろ、類似性に対する反応は心に生まれつき組み込まれているので、あとはそれに弾みをつけるだけでいい。
ここでコンピューターの力とビッグデータが役に立つ。フェイスブックなどのプラットフォームは、困った人を進んで助けてくれそうな人をやみくもに探す必要はない。フェイスブックがすぐにでも利用できる情報は膨大な量で、あなたや私が一年かけて処理する情報量など比較にもならない。あなたの友人一人ひとりのデータ──彼らの好みや友人や投稿内容──を持っており、それらの情報を高速で処理して、あなたと共通点の多い人びとを特定できる。もちろん、ポイントとなるのは、選択肢を賢く仕分けることだ。たとえば、もしあなたと最も共通点の多い人が過去の恋人だったら、あなたがいじめられているときに助けを求める相手の候補としてはよくないだろう。したがって目標は、特定の社会的カテゴリーや年齢層の人びと──頼りになり適切なサポートができる集団──を特定したうえで、プロフィールに基づいて彼らを仕分け、あなたの心の類似性センサーにひっかかる人びとを見つけ出すことだ。
このプロセスが意図したとおりに働けば、いじめられていることを報告したユーザーは、連絡を取るべき人の情報を得られる。この時点ですでにユーザーの心は、それらの人びとを信頼するように条件づけられている。要するにこのシステムは、ユーザーが援助を求めるよう、援助者の候補を特定しやすくするだけでなく、彼らが手を差し伸べてくれるとユーザーが確信を持てるようにする。