撤退障壁
市場からの撤退が困難となる要因。企業が市場から撤退する際に経験するコストやリスクが高いほど、撤退障壁は高くなる。撤退障壁が高い市場では、競合企業の参入も困難になるため、市場構造が変化しにくい。
どのような状況で用いるのか
1.市場参入戦略の策定
2.市場撤退判断の支援
3.競争分析と戦略立案
撤退障壁が高くなる要因
1.固定資産の特殊性
1-1.特殊な設備や技術が必要な市場では、固定資産の流動性が低い
1-2.撤退時に固定資産を他の用途に活用することが困難
1-3.高い処分コストや売却損失が発生する可能性がある
2.スケールメリットの存在
2-1.市場規模が大きく、効率的な生産・販売が可能な企業が競争優位を持つ
2-2.撤退によって、スケールメリットを失い、コスト競争力が低下する
2-3.市場再参入が困難になるため、撤退をためらう
3.契約や法律による制約
3-1.長期契約や法律により、撤退が制約される
3-2.撤退時に違約金や罰金が発生する
3-3.企業の評判やブランドイメージに悪影響を及ぼす
4.人的資源の制約
4-1.撤退に伴う人員整理
4-2.労働組合や社員の抵抗
4-3.再雇用の困難さ
5.顧客との関係性
5-1.強顧客との固な関係性
5-2.顧客の信頼喪失や再獲得の困難さ
5-3.撤退による市場シェアの喪失や顧客基盤の縮小
6.研究開発投資
6-1.研究開発への投資が高い市場
製薬など
6-2.撤退時に研究開発投資の回収が困難
6-3.再参入時に再び高額な研究開発投資が必要
7.政府規制や保護政策
7-1.政府規制や保護政策、補助金や税制優遇措置の喪失
7-2.再参入時に政府規制や保護政策の影響を受ける可能性
有効な問題
撤退障壁の高い市場は、競合企業の参入が困難であるため、参入企業は競争優位を享受できる
実行するために乗り越える必要があるハードル
1.正確な市場分析
1-1.市場の撤退障壁を評価するために、十分なデータと情報を収集する必要がある
1-2.市場構造、競合企業、規制等の複雑な要素を理解し、分析する能力が求められる
1-3.リスクとリターンを十分に検討し、適切な戦略を策定するためのコミットメントが必要である。
実行すると起きるネガティブなこと
1.過剰投資
1-1.撤退障壁が高い市場に参入するために、過剰な投資を行ってしまう
1-2.投資回収が困難になり、企業の財務状況に悪影響を及ぼす
2.市場撤退の遅れ
2-1.撤退障壁が高いと認識しているため、市場撤退を遅らせる可能性がある
2-2.損失の拡大やリソースの無駄遣いにつながる
事例
Apple
1-1.撤退障壁の高いスマートフォン市場において、iPhoneを成功
1-2.独自のiOS、アプリエコシステム、そしてハードウェアのデザインにより、競合他社と差別化を図り、市場で競争優位を獲得した。
2.テスラ
2-1.自動車市場は高い撤退障壁を持つが、テスラは電気自動車市場に参入し、急速に成長
2-2.革新的な技術とブランドイメージにより、競合他社と差別化し、市場シェアを拡大
3.facebook
3-1.ソーシャルメディア市場はネットワーク効果により、高い撤退障壁がある。
3-2.フェイスブックは独自のプラットフォームを構築し、ユーザー数を増やすことで競争優位を獲得し、市場での地位を確立した。