持越費用(キャリーコスト)
アニメーションには「持越費用」というやっかいな問題もあった。 持越費用とは、制作の作業をしていない社員にかかる費用だ。たとえばアニメーションの作業が終わり、アニメーターの仕事がなくなっても、給与は払わなければならない。ピクサーのように会社が小さいと、持越費用で利益など吹っ飛んでしまう。これはウォルト・ディズニーの時代から続く問題で、アニメーションへの参入障壁になっている。この問題は、実写映画では発生しない。プロデューサーや監督から、俳優、カメラ、エキストラなど関係者を制作のたびに集めるからだ。彼らにお金を払わなければならないのは制作にかかわっている間だけで、あとの面倒は見る必要がない。
アニメーションスタジオはやり方が違う。アーティストもほかの関係者も、全員がスタジオの従業員で、キャリアの初めから終わりまで同じ会社で仕事をする人も少なくない。彼らには映画を制作しているか否かにかかわらず給料を支払わなければならず、制作で忙しくしている期間以外に支払う従業員給与の負担が大きい。上手に計画して暇な期間を作らないようにしないと、ヒットを飛ばしても、その利益が持越費用に消えてしまいかねないわけだ。