意味発見価値
意味発見価値
フルマンと共同研究者たちは、学生たちにデータツールの価値を見いださせる狙いで、学生たちに次のようなお題を出した。自分の生活で統計学を使うシーンを想像できますか? 看護師、営業マン、管理職という職業に就いて統計学を使う自分を想像できますか? 学生たちはノート一~二ページほどの短いエッセイを書いた。
成果は歴然としていた。自分の生活と統計学の関わりを意識することで、学生たちの勉強へのモチベーションは大幅に上がった。成績がC平均からB平均へと一段階上がった学生もいた。要するに、統計学が自分の将来の職業、趣味、いつか築く家庭にとってなぜ大事かを説明する行為によって、学習のレベルが一足飛びに向上したのである。
演説の名手はこのアプローチをよく使う。プレゼンの達人は聴衆に内容が自分に関連性があると思わせることに心を砕く。ビル・クリントン元大統領はこの手法で聴衆を魅了することで知られていた。話題がモルジブ諸島であれば、クリントンのような手練れの演説者は聴衆に、あの国に行ったことがあるかと巧みに質問するかもしれない。話題がどこかで起きている紛争であれば、親戚が軍に入っている人はいないかとたずねるだろう。退屈なITツールの話だったら? 聴衆に自分の持っているコンピュータについてしばし考えさせる。
自分に経験があること、今後経験するであろうことのほうが、学習のモチベーションがはるかに上がる理由もこれで説明がつく。学習するとき、私たちは自分のいる世界を理解したいのだ。知識の空白を埋めたい、価値を見いだしたい。だから意味には自己永続的なところがある。つまり、統計学について知れば知るほど、統計学というものについてもっと知りたくなるのだ。