情報処理モデルから認知カップリングへ
情報処理モデルから認知カップリングへ
p81
サイバネティクスで提唱された重要概念「環境についてのモデル」です。環境についてのモデルを有しているからこそ、再実験を行う際に関与する出あろうパラメータは何か、それをどちらの方向に動かせばよいかを推定でき、フィードバック修正を行うことができるのです。
情報処理モデルの限界
サイバネティクスでは心の内側に環境のモデルをもちます。すなわち、環境は外側の存在であることを大前提にしています。
環境を心身の外側であるものとみなすと、どうしても環境と心身の接点(入口と出口)を図3-1の①と③のようにモデル化することになります。しかし、そうした考え方ではひとの認知と環境のダイナミックな相互作用を捉えられないという思想が、一九八〇年代に芽生えてきました。
その代表例が「状況依存性」(situatedness)、もしくは「状況に埋め込まれた認知」(situated cognition)という思想です(Clancey 1997)。認知プロセスは環境に埋め込まれていて、いわば環境と認知は一体となって働くという考え方です。
ダルメシアンはどこにいますかと聞くと、ダルメシアンが現れてくる
https://gyazo.com/fde2fb4c9c26ec1024b198e44d055a42
Gregory 1970 The intelligent eye"
認知カップリング
(諏訪 2004,後安 2004)
認知カップリングとは、「環境と行動と思考(同③)は互いに他を変容させる関係にある」という思想です。
情報処理モデル
https://gyazo.com/f4da0ae3eb79c40e06d898a754bc78e6
感知カップリングモデル
https://gyazo.com/78a0b5fb9bbfaf684e09a96f689451d4
考えているものごとに依存して知覚できる内容が決まるというダルメシアンの画像の例は、矢印Bです。何か行動をしてみたら考えが変わったということがあります。悩んでいることを日記に書いてみたら、文字媒体で表現することによって少し気持ちが楽になったという経験をなさった方もいるでしょう。矢印Dがその関係を表します。
情報処理モデルでは矢印は一方向でした。知覚した(環境から情報を取り込んだ)ことによって思考が進み'(矢印Aに該当)、思考したことを基に行動する(矢印Cに該当)ねというモデルでした。認知カップリングの考え方は、その逆方向(BやD)の関係もあるということを主張するのです。
https://gyazo.com/74672f959d670531cb70d2ffdd1abb1e
認知カップリングにおける身体と環境
論文
諏訪 2004
諏訪正樹. (2004). 「こと」 の創造. 認知科学, 11(1), 26-36.
後安 2004
後安美紀. (2004). 創造過程における知覚と行為のカップリング. 認知科学, 11(1), 12-16.
Clancey 1997
Clancey, W. J. (1997). Situated cognition: On human knowledge and computer representations. Cambridge university press.
出典