建設的相互作用
これは人が物事を「分かる」過程で何が起きているか、そしてより深く「分かる」ために他者の視点が役立つのかについて調べた研究です。
実験は、「ミシンの縫い目はどうやってできるか」について考えてもらいました。ミシンの縫い目は、上糸と下糸が絡み合ってできています。しかし縫っている途中は上糸の片方の端は糸巻きにあり、もう一方の端は布につながっています。一方下糸の端はボビンにあり、もう一方の端は布につながっています。このとき端のない2本の糸が実際にどのように絡み合うか、この問題について2人で一緒に考えてもらいました。
その過程を分析すると、「分かる」ことがさらに「分からない」ことを生み出していくことが分かりました。例えば「針によって上糸の輪ができ、その輪がボビンで下糸を通し、針を輪が引き上げることで縫い目ができる」と考えたとする。すると「ボビンが上糸の輪と下糸を通す働きはどのような機構になっているか」という問題が残るので、それを分かろうとします。そしてこのようなことが繰り返し起こることで、理解が深くなっていくことが分かりました。
また2人いることで、あまり分かっていない人がよく分かっている人の考えをチェックしたり批判することで、それがよく分かっている人に「わからない」を生むきっかけとなることが分かりました。例えば、少しわかっている人が「ボビンには隙間があってそこに輪が通る」と発話したとき、少しわかっていない人が「ボビンは宙に浮いた構造になっているの」と相手を批判する。ここで相手に説明できないとき、それを問題として説明を探ろうとする。このように2人いることで、相手に説明をしなければならない状況を作るため、効果的に理解を深める仕組みとなることが分かりました。
『禅とオートバイ修理技術』でパーシグがクオリティを探究していく中で「科学は無限に仮説が生み出てくるので真理に辿り着くことがない」につながる