基準
水は黒い
最初、僕らは水というのは水色に塗るものだというところから始まりました。ある時、これはもう僕と同じ年の男で、彼は四十代で死にましたけれどもその男が「水は黒い」と言い出しましてね。それで突然、自分たちのものの見方が変わったんですよ。それまでは、湖を描く時にいつも同じように描かなければいけないと決めていたんです。それはカットが変わった時に色が変わっているとお客がわからなくなるからというんですけれども、そうじゃなくて、アングルによって水の色が全部変わるという、当たり前のことなんですけれども、そういうことを画面の中に取り込もうとし始めたんですが、それは僕らだけじゃなくて一緒に共同作業してきた美術の連中の努力の結果なんです。