企業価値
答えはキャッシュフローだ。こう言うと、ニューヨークタイムズは黒字でツイッターは赤字なのに変じゃないかと思うかもしれない。でも、偉大な企業かどうかは、 将来の キャッシュフローを創出する能力で決まる。投資家はツイッターがこれからの一〇年間に独占利益を取り込むことができると予想し、新聞の独占は終わったと考えている。 単純に言えば、今日の企業価値は、その企業が将来生み出すキャッシュフローの総和だ(正確には、今日の貨幣価値は一〇年後の同じ金額のそれよりも高いので、未来のキャッシュフローを現在価値に割り戻さなければならない)。
ディスカウント・キャッシュフローを比べれば、低成長企業と高成長スタートアップの違いがはっきりとわかる。低成長企業の価値の大半は短期のキャッシュフローからくる。新聞のようなオールドエコノミーが企業価値を保ち続けられるとしたら、現在のキャッシュフローを五、六年間維持できる場合だけだ。でも市場に似たような代替物がある場合、競争によって利益は吹き飛ぶ。ナイトクラブやレストランはその極端な例だ。今は稼げていたとしても、より新しくトレンディな場所に人が流れれば、今後数年でキャッシュフローはおそらく先細るだろう。
二〇〇一年三月、ペイパルにはまだ利益がなかったものの、売り上げは年率一〇〇パーセントで伸びていた。将来のキャッシュフローを予測すると、ペイパルの現在価値の四分の三は二〇一一年以降の利益からきていることがわかった ── 立ち上げてからわずか二七か月の会社としては信じがたいことだった。ただし、実際にはこの予測さえも控え目すぎたことになる。ペイパルは今も年率およそ一五パーセントで成長し、割引率も一〇年前より低くなった。現在の企業価値のほとんどは二〇二〇年以降のキャッシュフローから生まれている。
短期成長をすべてに優先させれば、自問すべき最も重要な問いを見逃してしまう ──「 このビジネスは一〇年後も存続しているか」というものだ。数字はその答えを教えてくれない。むしろ、そのビジネスの定性的な特徴を客観的に考えてみる必要がある。