ダメージコントロール
ダメージコントロール(英語: damage control)とは、物理的な攻撃・衝撃を受けた際に、そのダメージや被害を必要最小限に留める「事後処置」を指す。通称「ダメコン」などと呼ばれる。自動車分野、医療分野、格闘技などのスポーツ、軍事分野などで使われる。
軍艦などの「ダメージコントロール」については、米西戦争や日清戦争の頃から艦艇などの被害を軽減する方法として知られていた。
現在、この分野においては、太平洋戦争中に大規模な海戦を経験したアメリカ海軍や大日本帝国海軍の頃の戦訓を取り入れた海上自衛隊のノウハウは、世界でも類を見ないものになっている。一方、日米の艦艇と比べると、それらの経験が比較的少ないヨーロッパ諸国やロシアの艦艇は、被害対策に対する意識の違いが表れているのが分かる。ヨーロッパ諸国やロシアの艦艇は居住区などの居住性が良い一方で、現在でも可燃性のある材質を使用していたり、延焼を食い止める構造が弱かったり、被弾すると危険な箇所に士官室が配置されていたりする。
こういったものは実戦を経験して初めて得られるノウハウでもあるため、訓練等で補うのは難しい。1982年のフォークランド紛争においてエグゾセ空対艦ミサイルの攻撃を受けたイギリス海軍の42型駆逐艦「シェフィールド」は、機関部がシフト配置でなくパラレル配置になっていたうえにアルミニウム合金製の隔壁や仕切弁が融解したため、機械室が容易に延焼してしまった。消防ポンプを起動できなかったうえに可搬式ポンプも能力不足で消火主管が機能せず、火災範囲は艦内の約2⁄3に達し、艦自身の消火活動はほとんど遂行不能となってしまった。艦は放棄され、数日後の曳航中に荒天に遭遇、沈没している。この事件について、アメリカ合衆国の著名な海軍史家であるノーマン・フリードマンは、「現代の精緻な軍艦は対艦ミサイルに耐えられないという誤解が蔓延したが、20年にわたる冒険的なコスト削減のツケがとうとう回ってきたというのが実態である」と評している。
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