スーパーアプリ
ソフトバンクワールド2019の基調講演で孫正義氏は、 ペイメント機能に始まり、移動、飲食、金融など生活インフラ機能を全方位的に捉えたアプリを「スーパーアプリ」と表現 し、その分野のグローバルプレイヤーを紹介しました。本書を執筆している2020年の現在、日本ではヤフーとLINEの統合をはじめ、ペイメント競争から「スーパーアプリ」競争に変化しつつありますが、アジアでは既に多くの「スーパーアプリ」が生まれてい
スーパーアプリの例としてGrabを紹介しましょう。Grabは、タクシー配車兼ライドシェアから始まりました。その後、食事を持って来てくれるデリバリーフードや、日本のバイク便のようなサービスへと広がりました。 タクシーにとどまらず、「人やモノが移動する」ことに関わることはすべて担う というのがGrabのコア価値になります。今ではさらにサービスが広がり、タクシー配車やデリバリーフードで使える「GrabPay」というモバイルペイメントを提供しています。
Grabは、ドライバーにとって、安心して稼ぐことができるインフラなのです。 Grabにはドライバーの行動が蓄積されるため、稼ぎがどの程度になるかを予測 してくれますし、「車内広告を掲載する」といったオプションによって、稼ぎを増やすこともできます。さらに、こうした機能によって「このドライバーはどの程度の収入を確保できるか」が分かるため、その情報を基にGrabはドライバーに融資し、その融資で利益を出しているのです。
成功しているスーパーアプリは基本的に、銀行口座を持たない「アンバンクト」に対する金融サービスを収益化のコアにしています。