『社会における知識の利用』
・ 組織が国家レベルであれ、企業レベルであれ、適切な判断をするには、特定の時と場所の環境に依存する、分散した知識が必要で、これは専門的知識とは異なる。
・全ての知識を中央に集中し、計画をすることでは、特定の時と場所の環境での変化に迅速に適応する問題は解決できない。しかし、分散した知識だけでは不十分で、より大きな経済体系の変化の全体パターンにその人の決定が必要に応じて合致するように、その人に更に情報を伝える問題、動機づけ問題他が残っている
・統計量で変化を議論することが多いが、小さな変化を見落とし勝ちである。
3)「計画」は入手可能な資源の配分についての、相互関連のある複合決定を指す。全ての経済活動はその意味で計画である。この計画は誰がやるにせよ最初は計画者に与えられてはいない知識によるもので、それを計画者に伝えなくてはならない。この問題に関連して、誰が計画をするかという問題がある。議論があるのは計画がなされるべきかどうかではなくて、計画は中央で全体経済体系を一つの権威で行なうか、多くの個人の間で分けて行なうかである。
4)知識は特定の個人のものと、専門家権威が保持すると我々が思っているものとがある。科学的知識が公衆の目には重要視されるため後者の方が良いと考えがちだが、それだけでないことを忘れがちである。科学的知識は専門家を見付ければよいということになるが、それは単に問題を移動させたに過ぎないし、たとえそのようにして問題を解決したとしてもそれは広い問題の一部である。とても科学的とは呼べない、体系化されていない知識が疑いもなく存在する。それは特定の時と場所の環境の知識である。誰でも有効に使えるユニークな情報を保持していて、他人に対して優位性をもつ。但し、その利用はその人に決定を任し、その人の能動的協力がなされて初めて可能になる。
6) 社会の経済問題は、特定の時と場所の環境での変化に迅速に適応するのが主であると、合意できるのなら、それらの環境に精通し、関係のある変化を直接知っていて、その適応のために直接利用可能な資源のことを知っている人に、最終的決定を任せなければならないということになる。まず全ての知識を中央委員会に伝え、全ての知識を統合し、指令を出すということでこの問題は解決できない。なんらかの非集中の形で解決しなければならない。非集中化が必要なのは、そのようにして初めて特定の時と場所の環境の知識が素早く利用できるからである。しかし現場の人の、自分の周囲の事実に限定した、慣れ親しんでいる知識だけでは決定は出来ない。より大きな経済体系の変化の全体パターンにその人の決定が必要に応じて合致するように、その人に更に情報を伝える問題が残っている。
出典 http://www.issj.net/mm/mm09/06/mm0906-kk-kk.pdf
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