『在野研究ビギナーズ―勝手にはじめる研究生活』
https://gyazo.com/e76b59c371434206948fd5fa9482d3cd
目次
序 あさっての方へ
第一部 働きながら論文を書く
第一章[政治学] 職業としない学問[酒井大輔]
第二章[法学] 趣味の研究[工藤郁子]
第三章[批評理論] 四〇歳から「週末学者」になる[伊藤未明]
インタビュー1 図書館の不真面目な使い方 小林昌樹に聞く
第四章[生物学] エメラルド色のハエを追って[熊澤辰徳]
第五章[活字研究] 点をつなごうとする話[内田明]
第二部 学問的なものの周辺
第六章[専門なし] 新たな方法序説へ向けて[山本貴光+吉川浩満]
第七章[民俗学] 好きなものに取り憑かれて[朝里樹]
第八章[文学研究] 市井の人物の聞き取り調査[内田真木]
第九章[宗教学] センセーは、独りでガクモンする[星野健一]
第一〇章[文学研究] 貧しい出版私史[荒木優太]
インタビュー2 学校化批判の過去と現在 山本哲士に聞く
第三部 新しいコミュニティと大学の再利用
第一一章[専門なし] 〈思想の管理〉の部分課題としての研究支援[酒井泰斗]
第一二章[共生論] 彷徨うコレクティヴ[逆卷しとね]
第一三章[哲学] 地域おこしと人文学研究[石井雅巳]
インタビュー3 ゼロから始める翻訳術 大久保ゆうに聞く
第一四章[哲学] アカデミアと地続きにあるビジネス[朱喜哲]
----
序 あさっての方へ
在野研究とは、ごく簡単に、大学に所属をもたない学問研究のことを指している。
在野という後
権力そのものを相対化する立場
在野研究の魅力
多くのアカデミシャンのように一年間の授業計画を組まなくてもいいし、査読誌に論文を投稿して研究会に自分をアピールする必然性もないし、学会で適当な役職につかなければいけないこともない。現状の学会に不満があれば、読書会や勉強会のような小さなコミュニティを立ち上げることもできるし、オルタナティブ雑誌やインターネットを活用することで研究成果を発表することもできる。論文という形式的叙述にこだわる必要すらないかもしれない。
在野研究のデメリット
在野研究には明日がない。明日は、労働や育児や病院通いといったもろもろスケジュールで埋め尽くされているから。生活のルーティンや雑事のせわしなさが優雅な(と想像される)研究時間をことごとく奪う。未来の空き時間が一瞬の隙も与えずに現在の係累によって占領されてしまう。
それでも、「あさって」ならばある、「あさって」こそある、と信じている。
明日の明日は二重の意味で到来する。知識不足や指導者の不在によって、その研究がなんの価値をもつのか、誰が評価するのか、正しいことを述べているのか、まったく見当もつかないのにそれでも突き進む頓珍漢でジグザグな方向として。あさっての方へ。
そして、多くの勤め人、ときにアカデミシャンですら講義準備やノルマとしての論文執筆によって汲々した明日にせっつかれる日常の秩序を一気に飛び越え、未来を勝手に望見する明日以上の明日、超明日として。あさっての方へ。
明日はバイトだ。でも、あさっては違う。あさっては必ず途中のまま止まった論文にケリをつける、あさっては図書館に籠もって調べものをする、あさっては新しく立ち上げた読書会のメンバーと初めて挨拶をする、あさっては、あさっては、あさっては…。
第一部 働きながら論文を書く
第一章[政治学] 職業としない学問[酒井大輔]
在野研究のメリット
学問のために生きることと、学問によって生きることを分離できる。
生活が安定する
休職中の研究者にとっては、論文執筆は就職活動の一環である。在野研究は就職活動はすでに終わっている。
フットワークが軽い
誰も手をつけない未開拓のテーマは成功のチャンスもあるが失敗のリスクも大きい。在野研究であれば臆さずチャレンジでする。
第二章[法学] 趣味の研究[工藤郁子]
論文は鑑賞の対象になる
「Aさんの論文、ひとつひとつの分析が行き届いていて、緻密だよね」
「在外研究中のものだよね? あれはいい。あの丁寧さを目指したい」
「解釈が禁欲的で堅牢な論文が好き。B先生の論文がうらやましい」
「わかる……」
「C先生の例の論考にあこがれる。これまでの議論の前提をディスラプト(破壊)して、すべてを焼き払っているところがステキ!」
「そういえばあのテーマ、焼け野原になったままですね……」
第三章[批評理論] 四〇歳から「週末学者」になる[伊藤未明]
インタビュー1 図書館の不真面目な使い方 小林昌樹に聞く
第四章[生物学] エメラルド色のハエを追って[熊澤辰徳]
第五章[活字研究] 点をつなごうとする話[内田明]
第二部 学問的なものの周辺
第六章[専門なし] 新たな方法序説へ向けて[山本貴光+吉川浩満]
第七章[民俗学] 好きなものに取り憑かれて[朝里樹]
第八章[文学研究] 市井の人物の聞き取り調査[内田真木]
第九章[宗教学] センセーは、独りでガクモンする[星野健一]
第一〇章[文学研究] 貧しい出版私史[荒木優太]
インタビュー2 学校化批判の過去と現在 山本哲士に聞く
第三部 新しいコミュニティと大学の再利用
第一一章[専門なし] 〈思想の管理〉の部分課題としての研究支援[酒井泰斗]
第一二章[共生論] 彷徨うコレクティヴ[逆卷しとね]
第一三章[哲学] 地域おこしと人文学研究[石井雅巳]
インタビュー3 ゼロから始める翻訳術 大久保ゆうに聞く
第一四章[哲学] アカデミアと地続きにあるビジネス[朱喜哲]