紅包(ホンバオ/レッドポケット)
from 『アフターデジタル2 UXと自由』
紅包(ホンバオ/レッドポケット)
一方のテンセントは、ペイメントに関しては出遅れましたが、かなり特殊というか、ビジネス脳ではなかなか思いつかないアイデアで広めました。テンセントが用いたのは、「紅包(ホンバオ、またはレッドポケット)」です。
日本でいう「お年玉」のことです。中国では大人が子供に配るだけでなく、忘年会や納会のような場で、上司から部下へ、会社から社員へと、紅包が配られる習慣があります。文字通り、赤い包みに現金を入れて皆に配るわけです。こうした文化をWeChatは紅包機能としてデジタル実装したのです。
どのような機能かを簡単に説明しましょう。 図表2-1 の3つの画面を見てください。まず、WeChat上で紅包を送りたいグループ(LINEグループとほぼ同様)を選んだ上で、「総合金額」と「山分けできる人数」を入力します。「10元を2人で山分け」するように入力し(左の画面)お金をグループに投下すると(中央の画面)、早い者勝ちで奪い合うことになりますが、受け取れる金額はランダムです
私が中国駐在を始めた頃、この話を聞いて「ぜひ試してみよう」と、上海オフィスでの忘年会で皆が食事をしている際、突然「1,000元を5人で分ける」という設定で紅包を投げてみました。すると、気付いた1人のメンバーが「紅包が届いてる!」と声を上げ、他のメンバーも我先にとWeChatを開き始めました。
私よりも役職の高い数人が後追いで紅包を投げ始め、「また来た!」「やった!今度こそ受け取れた!」と、忘年会はかつてない盛り上がりを見せ始めました。
もともと 文化的に存在していた「ただ受け取るだけの紅包」を、「コミュニケーションを生み出すデジタル紅包」として忘年会のシーズンにゲーム化 し、ITギークが実際の忘年会を通じて会社に広め始めます。やってみると楽しく、しかもお金がもらえるわけですから、皆がペイメント機能を開通し始めます。日本の感覚からするとイメージしにくいかもしれませんが、多くの企業は会社のWeChatグループを作っているので、会社のグループチャットというコミュニティーによってバイラルで広まったのです。まさにコミュニケーションに特化したゲームカンパニーならではの方法と言えます。