AI終末論者ニック・ランドの帰還 2026.05.06
https://gyazo.com/5a6c762558cded911d19af34f2ad892b #ニック・ランド
https://wired.jp/article/sz-silicon-valleys-favorite-doomsaying-philosopher/
「加速主義」の父とも言われるニック・ランドは、デジタルの超知能が人類を皆殺しにすると信じている。シリコンバレーの彼の信奉者たちは「AIに世界を乗っ取られないようにするのではなく、可能な限り加速させるべき」だとそれを解釈する。
再浮上するランドの思想
AIの「未来からの侵攻」
シリコンバレーに呼び戻される
ふたりの巨人の現在地
どこに向かうのか誰もわからない
AIが生み出す黙示録の悪魔
予言者を求める若者たち
1994年春、イングランド中部の老朽化したモダニズム建築のキャンパスで開かれた哲学カンファレンスに、学者、メディア論研究者、アーティスト、ハッカー、そしてDJたちの一団が集まっていた。「バーチャルな未来」と題されたそのカンファレンスで、若い教授の講演に耳を傾けるためだ。
時刻は朝の10時。前夜に学生会館で開かれたレイヴのせいで、聴衆のほとんどはへとへとの状態だった。だがその講演──タイトルは「溶融(メルトダウン)」──には大きな期待が寄せられていた。
ニック・ランドは、当時の英国における最高峰の哲学コースのひとつであるウォーリック大学の哲学科で終身在職権をもつ教授だった。その反ヒューマニズム論、テクノロジーの未来についての過激な予言、そして常識外れな講義スタイルによって、ランドには熱狂的な信奉者がついていた。
ランドの学界発表はたちまち、より「実験的」になっていった。96年のカンファレンスでは床に横たわり、カットアップした詩を、聴衆が「悪魔のような声」と表現した声音で朗唱し、そのBGMにはジャングルミュージックを流した。
だが94年のその日、ランドはただ立ち上がって話しはじめた。サイズが大きすぎる黒のジャンパーに包まれた細い身体を引きつらせるようにしながら話すその声は、やわらかく途切れがちで、ときに囁きにもなった。「物語はこんなふうに進んでいく」とランドは口を開いた。
「ルネサンス的な合理化と航海術がコモディティ化を急速に促進したことで、地球はテクノキャピタル(技術資本)のシンギュラリティ(技術的特異点)に支配される。物流を加速する技術的・経済的な相乗効果は、自動的に進化していく機械が暴走するなかで社会秩序を崩壊させる。市場がインテリジェンス(知性)をつくり出す術を学習するにつれ、政治はモダン化し、疑心暗鬼を強めながら状況を把握しようと試みる」
当時、ランドの話を理解する者はほとんどいなかった。大部分の人はその予言を、テクノロジーで錯乱した大陸哲学者の戯言として軽く受け流していた。98年までに、覚醒剤の濫用に加え、2000年問題で世界が終わるのではないかという予想によって心身共に消耗したランドは、精神を病んで学界を去り、この界隈から姿を消した。
再浮上するランドの思想
それから四半世紀、世界は一変した。AI終末論は、それほど突拍子もない話のようには感じられなくなっている。
技術革命が政治秩序を破壊するというランドの見方はいまや、周縁へと追いやられた学界の極左ではなく、シリコンバレーと結びついて成長しつつある新右翼を惹きつけている。そしてランドは近年、同時代における最も影響力のある反動思想家として再浮上している。
その思想は、テック界の最上層にいる人々に浸透している。巨大なベンチャーキャピタル会社アンドリーセン・ホロウィッツの創業者であるマーク・アンドリーセンは、ランドを自分の「お気に入りの哲学者」と呼んでおり、シリコンバレーで働く人々から聞いたところによれば、ランドの著作を取り上げる読書会が増加しているらしい。
ランドは、10年代の初頭に「ネオリアクション(新反動主義)」の中心人物となり、新たな信奉者を獲得しはじめた。ネオリアクションとは、主としてさまざまなブログの片隅で展開され、その後ネット極右勢力が台頭する分岐点となった知的潮流だ。12年に発表した長文のエッセイにおいてランドは、この潮流に対して哲学的な基盤とともにキャッチーな呼び名を与えた。すなわち「ダーク・エンライトメント(暗黒啓蒙)」だ。
カーティス・ヤーヴィンをはじめとする新反動主義者たちと同様に、ランドは民主主義・・・・