米国防総省の出資を受けた小さな資源会社 2025年8月4日
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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB3057C0Q5A730C2000000/
ジェームズ・リティンスキー氏は2015年、経営難に陥っていた資源会社に1億ドル(約150億円)を投じた。17年にはこの米マウンテンパス鉱山を母体とするMPマテリアルズを設立した。トランプ米政権が7月10日、重要鉱物での中国の優位に対抗する戦略の中心にこの企業を据えたことで、同氏の賭けは華々しい結果をもたらした。
米国防総省がMPマテリアルズの株式の15%相当を4億ドルで取得し、同社の生産物を10年間、現在の市場価格の2倍で購入することを決定。7月第2週の米株式市場で同社の株価は48%急騰した。リティンスキー氏の個人資産は2億ドル増えた。
米アップルも7月15日、MPマテリアルズから「米国産」レアアース(希土類)磁石を購入する5億ドルの契約を結んだと発表した。立て続けの合意は、防衛関連技術に不可欠な17の元素の国内サプライチェーン(供給網)を復活させるトランプ政権の取り組みが背景にある。
レアアースはミサイル誘導や衛星通信、ステルス効果を生むコーティングなど様々な用途を持つ強力な磁石の生産に欠かせない。最新鋭ステルス戦闘機「F35ライトニング2」、巡航ミサイル「トマホーク」など米国製兵器に不可欠だ。
調査会社ベンチマーク・ミネラルズによると、中国は世界の希土類酸化物の生産の70%、加工の85%を占める。中国政府は消費国との緊張が高まるたびにレアアースの輸出を制限してきた。
マウンテンパス鉱山は1970〜80年代には世界で最も多くレアアースを生産していた。だが中国との競争による値崩れで行き詰まり、2002年に生産を停止した。
リティンスキー氏は米テスラの台頭と電気自動車(EV)販売台数の増加から、レアアース採掘への投資は賢明だとみなし、最終的にマウンテンパス鉱山の権益を手に入れた。
MPマテリアルズは20年後半、特別買収目的会社(SPAC)を使って上場し、5億4500万ドルを調達した。プライベートキャピタル(未公開企業への直接投資)で10億ドル以上を調達したほか、国防総省から4500万ドルの助成金を受け、鉱山の操業を再開した。
MPマテリアルズとの合意で米国のレアアース問題が完全に解決されるわけではない。同社の鉱山の地質からすると、主に産出されるのは軽レアアースで、永久磁石に必要な重レアアースは少ない。一部の鉱石は引き続き輸入が必要となる可能性がある。