米国覇権が主導するグローバリズムは終わった 2025年10月12日
https://gyazo.com/cb1cf4ef5710e36171197bb7f85550c0
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/71169 #レイ・ダリオ
ダリオ氏の予想で重要なのは、ダリオ氏が経済と政治を不可分のものとして見ているということである。ダリオ氏はなぜインフレと戦争を関連付けることができたのか。それはまず、インフレがアメリカの債務の問題だからである。
現金給付でインフレが起きたということは、逆に言え経済大国アメリカがそこまでしなければ自国経済を支えられなかったということである。
アメリカは今でも世界1位の経済大国だから、そこだけ見ればアメリカが衰退しているとは誰も思わない。
だが元々低金利政策だった緩和政策が量的緩和になり、それが現金給付になってインフレを引き起こしたことを見れば、アメリカが経済を維持するために過激な政策を取らなければならなくなっていることは、ファンドマネージャーの目から見れば明らかである。
そして今、トランプ政権はインフレが収まっていない状況下で金融緩和をしようとしている。
トランプ大統領が焦っているのは、コロナ後のインフレと金利上昇で米国債の利払いが急増し、アメリカの財政赤字の半分にも達しているからである。
それは勿論軍事費も圧迫している。それが、インフレと戦争の関係なのである。アメリカは第2次世界大戦後覇権国家になったが、覇権とはかなりの程度、どれだけの資金を軍事費に割けるかと関係している。
だから、アメリカの財政状況が変わってきたということは、アメリカの覇権の状況が変わってきたということである。
アメリカが軍事費に自由にお金を使えた状況下では、他の国々はアメリカの言うことを聞かざるを得なかったし、それが仮に他の国にとって横暴な要求であったとしても、それに刃向かえる国はなかったのである。
だが、アメリカの要求を無視してもアメリカは大したことは出来ないと他の国々が思い始めると、これまでアメリカの振る舞いを我慢していた国が我慢をしなくなる。
それがロシアのウクライナ侵攻を引き起こし、ガザではイスラエルに対して反撃を試みる人々が出てきたわけである。
ダリオ氏は更に次のように言っている。
世界秩序は変わりつつある。多国間協力の世界秩序は終わった。
国連があり、国際司法裁判所があり、WHOがあり、WTOがあり、IMFがあり、世界銀行があり、多国間で協力しようとするアメリカの世界秩序、それはもう終わった。ほぼ終わったと思う。
こうした状況に戻ってゆくとは思わない。
国際機関というものは、戦後にアメリカが主導で作った。
それは表向きは「話し合いで民主的に解決しましょう」というものだったが、例えば国連の常任理事国はアメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアの5国で構成され、一見公平に見えながら、きっちり過半数が欧米の国で占められるように作られている。
それはつまり、一見公平に見えるが本質的には自分の思うように物事が進んでゆくためのシステムをアメリカが作ったということなのである。
それを戦後、世界の国々は受け入れた。何故か? アメリカにはそれを押し通すだけの力があったからである。
そして、西側諸国の人々はそれで良いと思っていたかもしれないが、世界のすべての人々がそう思っていたわけではない。
だから、アメリカに従わなくても良い状況下になれば、途端にこうしたシステムは壊れ始める。国連を含むアメリカが作った国際機関の賞味期限は、アメリカの覇権の賞味期限とまったく同じになるのである。
これまでは国際問題をどう解決するかを多かれ少なかれアメリカが決めていた。だが、アメリカの独断に他の国が従わないとなると、これから国際問題はどう解決されてゆくのか。
ダリオ氏は次のように言っている。
歴史を振り返り、今の状況を見れば、こうしたことが紛争の形で解決される傾向が出てきている。
今までも問題が力で解決されてこなかったわけではない。アメリカが独断的に力で解決してきたのである。
アメリカの財政に余裕がなくなり、アメリカの覇権に反発しようとする国が出て来れば、力と力がぶつかることになる。
ダリオ氏は次のように続けている。
そうならないことを祈るが、祈ることは戦略にはならない。
覇権国家が衰退するとき、戦争が起きる。そしてインフレも酷くなる。
https://www.zerohedge.com/markets/were-wars-ray-dalio-warns-civil-war-soaring-debt
「我々は戦争状態にある」:レイ・ダリオ氏が「内戦」と債務急増を警告 2025.10.14
「世界を形作る」力は全て今や混乱に陥っており、アメリカはその好例だと述べた。
「アメリカやその他の国々で、和解不可能な相違点が存在する中で、ある種の内戦が勃発しているのだ」
米国政府の債務が急速に増加し、第二次世界大戦前の状況と「非常によく似ている」状況を生み出している。
債務の急増は問題の一部に過ぎない。世界的な紛争の悪化と富の不平等も多くの懸念材料を生み出す環境を作り出している。
この状況がうまく対処されなければ、景気後退よりも悪い事態が起こるのではないかと懸念している。
通貨秩序は崩壊しつつあります。十分な資金を使えないため、通貨秩序を変えようとしています。国内秩序、統治のあり方において、大きな変化が起きています。そして、世界秩序にも大きな変化が起きています。このような時代は、1930年代と非常によく似ています。
富の貯蔵庫としてのドルの役割が崩壊し、民主主義政治の規範を超えた国内紛争や国際的緊張の高まり、さらには軍事紛争にまで発展する可能性を指摘した。
それは1971年の金融システムの崩壊のような事態になるかもしれない。2008年のような事態になるかもしれない。非常に深刻な事態になるだろう。
これらの他の問題が同時に発生すれば、事態はそれらよりもさらに深刻になる可能性があるとダリオ氏は述べた。