時価総額、エンタメが自動車抜く上位9社 2025年6月30日
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日本株の上昇が勢いづいている。30日の東京株式市場で日経平均株価は5営業日続伸した。原動力の一つが、世界で人気の高いエンターテインメント関連銘柄への資金流入だ。
ソニーグループや任天堂といった主力9社の時価総額は57兆円と2025年に3割増え、トヨタ自動車など自動車の主要9社を30日に逆転した。関税政策や景気に振られにくい安定感と成長性に投資家人気が集まる。
同日の日経平均は前週末比336円(1%)高い4万0487円と、24年7月17日以来の高値水準となった。同年8月の「令和のブラックマンデー」、25年4月の「米関税ショック」という2度の急落を乗り越え、最高値(4万2224円)が視野に入り始めた。
ゲームやアニメ、キャラクターを手がける日本の「エンタメ」関連銘柄が高値回復を演出する。上場株全体で時価総額をこの間に最も増やしたのが、30日も上場来高値を付けた任天堂だ。6.7兆円増え18兆円となった。防衛予算拡大が期待される三菱重工業(5.4兆円増の12兆円)を抑えた。
増加額3位にはゲーム機、映画、アニメ、音楽と多方面に展開するソニーG(4兆円増)が入った。コナミグループ(1.6兆円増)やバンダイナムコホールディングス(1.2兆円増)も、防衛や人工知能(AI)関連銘柄と並び上位に食い込んだ。
日経新聞が選定したエンタメ主力銘柄9社の時価総額合計(30日時点)は57兆2000億円と、24年末比で28%多い。日本の主力産業である自動車9銘柄は米トランプ政権の高関税政策の標的にされ、18%減の56兆8000億円。逆転はゲーム制作のネクソンが上場した11年以降で初めてだ。
日立製作所に代表される製造業9銘柄(今年8%増の95兆円)、メガバンクや生損保の金融9銘柄(2%増の80兆円)は規模は依然大きいものの、増加の勢いはエンタメ株に軍配が上がる。
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マネーを集めるのはエンタメ株が守りと攻めの両面を兼ね備えるためだ。
まず市場がトランプ関税の影響が及びにくい強みがある。世界貿易機関(WTO)はデジタルコンテンツには関税をかけないことで合意している。映画の配信やゲームソフトのダウンロードは関税の対象外だ。
任天堂はゲームソフトの売上高に占めるデジタル比率が25年3月期に53.5%と、新型コロナウイルス禍前(19年3月期)の25%から大幅に伸びた。新型家庭用ゲーム機「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ・ツー)」の発売に伴い新作ソフトのダウンロードにも期待がかかる。
日本のエンタメやコンテンツ人気が高い新興国で、所得水準が高まっていることも大きい。調査会社ヒューマンメディアの長谷川雅弘氏は「コロナ禍で自宅でアニメ配信やゲームを楽しむ文化が世界に広がった」と指摘する。「推し活」と呼ばれる趣味へ投資を惜しまない人が増え、景気変動への耐性も強まった。
成長性もある。キャラクターの商品化や配信サービスのライセンスで収益を得る知的財産(IP)ビジネスは営業利益率も高く、一度ヒットすれば稼ぎは大きく膨らむ。例えば「ハローキティ」などを手がけるサンリオの自己資本利益率(ROE)は49%と国内主力企業ではトップクラスだ。
市場の成長期待を示す予想PER(株価収益率)はサンリオが39倍台、任天堂が53倍台と米AI銘柄の雄、エヌビディア(36倍台)を上回る。
コモンズ投信の伊井哲朗社長は運用する投資信託「ザ・2020ビジョン」で5月末時点でサンリオが首位になるなど、多くのエンタメ銘柄を組み入れている。「自動車のように、エンタメも外貨を稼げる銘柄に成長している。市場自体が拡大し長期投資できる」と話す。
実際、経済産業省のまとめでは日本発コンテンツの海外売り上げは23年時点で5兆8000億円規模と半導体(5.5兆円)、鉄鋼(4.8兆円)の輸出額を超える規模に育っている。
技術力で中国の猛追を受ける製造業と異なり、成長持続が期待できることには海外投資家も注目する。米系運用大手ティー・ロウ・プライス・ジャパンの渡辺博史・取締役運用本部長は、日本株運用戦略にエンタメ株を組み入れる。「日本では週刊マンガ雑誌など効率的な新人発掘の仕組みができている。製造業に代わって日本が強みを発揮する分野だ」と話す。