日本からの資本流出が過去最高 2024年11月14日
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低成長の日本からの資本流出を受け、円安圧力が強まっている。
米国のトランプ次期大統領がインフレ的な政策を打ち出す可能性が高いことを踏まえ、日米金利差を持続的な円安要因と見る為替市場関係者は多い。ただ金利差ほど目立たないが、貿易と投資に伴う資金フローも同様の影響力を持つ。
日本は第3四半期(7-9月)、過去最高の8兆9700億円の経常黒字となったが、直接投資と証券投資の流出額はそれを上回る規模だった。9月にトレーダーが円キャリートレードを解消したことで円は対ドルで一時1年2カ月ぶりの高値を付けたものの、その後は約10%下落し、14日にはおよそ4カ月ぶりに1ドル=156円台を付けた。
経常黒字が高水準でも円高になりにくいのは、「直接投資や証券投資が経常黒字を相殺する状況になっている」ためだとBofA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジストは説明する。「経常黒字のうちのほとんどは所得黒字によるもので、海外に再投資される部分が大きい。経常収支だけで見ると見間違える」と話す。
経常収支は輸出入のほか、雇用者報酬や直接・証券投資からの収益など国境を越える資金の流れを測定する。日本は第3四半期に、過去最大となる12兆2000億円の第一次所得収支の黒字を計上した。これにより、貿易・サービス収支の赤字が相殺され、経常黒字が増加した。
「貿易・サービス収支が不足する場合、外貨の手当てにより円売りになる」と東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは指摘。今後も「そうした傾向は続く」とみる。
日本からの直接投資の流出額は、1996年以降ほぼ全ての四半期で流入額を上回る。ブルームバーグが国際通貨基金(IMF)のデータを分析したところ、6月末時点での海外から日本への直接投資残高は国内総生産(GDP)の8.3%と、経済規模の大きい20カ国の中で最低だった。英国では99%、米国は57%に上った。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、「海外企業の参入障壁が大きい」と話す。「海外企業が日本で事業を始めると手続きが煩雑」だと指摘し、「日本は成長率が低いので市場が広がっていかない」とも述べた。
日本の潜在的な経済成長率は過去20年間停滞しており、日本銀行による直近の推計では0.6%にとどまる。これは、資本流出がさらに加速する可能性を示唆する。
日本では海外からの証券投資残高がGDPの90%に上り、海外からの直接投資残高をはるかに上回る。
しかし、こうした証券投資の資金流入について、三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、ほとんどが為替ヘッジ付きのため、円高にはつながりにくいと話す。また「短期の投機的なフローが多く、長期保有は進んでいない」ことからも円高効果が発揮されていないと説明した。
日本の金利は他国よりもはるかに低い。日本に投資する海外投資家は円安をヘッジすることで自国との金利差からリターンを得られるため、為替ヘッジ付きで投資する場合が多い。
一方で東海東京の柴田氏は、日本の対外証券投資について「国内に投資先がないので、米国債や米国株に投資した際の配当金や償還金は、海外に再投資される場合が多い」と話している。