原発コストは太陽光発電より高い 2024年12月12日
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米南部ジョージア州で電気代が急騰している。「自宅に断熱材を入れたばかりなのに」。州都アトランタに老夫婦2人で暮らす年金生活者のアンナ・ハマーさんは電気代の請求書に驚いた。8月は618ドル(約9万3千円)で、前年同月の2倍近い。
アトランタ郊外に住むソフトウエアエンジニアのジェームズ・ピンダーさんも、7月の電気代は同6割増の646ドル。「原発は安いと聞いていたのに」
急上昇の原因は地元のボーグル原発だ。新設の3号機が2023年7月に、4号機が24年4月に稼働し、電力会社ジョージアパワーは建設費を電気代に上乗せした。同州は発電コストなどを電力価格に転嫁する「総括原価方式」を採る。
当初140億ドルとみていた建設費は2倍以上の350億ドル超。11年の東京電力福島原発事故を受けた安全対策費が膨らみ、人件費や資材の高騰も響いた。09年運転開始の日本の最新原発、北海道電力泊3号機の建設費は2900億円だったが、いまや1ケタ高い。
原発は安く、再生可能エネルギーは高い――。そんな常識はもう過去のものだ。米ラザードによると、09年に1メガワット時あたり359ドルだった太陽光発電のコストは、世界で大量のパネル設置が進んだ結果、19年に9割減の40ドルに下がった。
陸上風力も同135ドルから41ドルに低下した。原子力は同123ドルから155ドルと逆に高くなり、再生エネと逆転した。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、23年に導入された再生エネ発電設備のうち81%が、火力発電のコストを下回った。いまや再生エネは「最も安い電源」だ。
世界最大の太陽光発電所が中国内陸部の砂漠にある。新疆ウイグル自治区ウルムチ市中心部から約120キロ。地平線まで続く黄砂の上に、太陽光パネルの黒い列がしま模様を描く。
面積は約130平方キロメートルと東京・山手線が2つすっぽりと入る。年60億キロワット時を発電し約300万世帯をまかなう。中国の国有大手が出資し、投資額は150億元(約3100億円)規模にのぼる。
習近平国家主席の旗振りで、中国が23年に新設した太陽光発電の設備容量は前年の2.5倍の2億1630万キロワット。米国に設置済みの太陽光1億5900万キロワットを上回る量を1年間で設置した。中国の再生エネの発電能力比率は23年に50%に達し、日米を上回る。
世界最大だった中国の二酸化炭素(CO2)排出量も近く減少に転じる可能性がある。中国は再生エネ市場を席巻し、脱炭素の国際交渉でも発言力を強める。
日本は逆回転する。22年度の再生エネ導入量は639万キロワットだったが、23年度は12月までに342.6万キロワットにとどまる。日本の太陽光発電コストは1キロワット時あたり9.9円(23年下期)と世界の約2倍の高さ。陸上風力は約3倍だ。「再エネは安い」という世界の常識が、日本では通用しない。