共和党勝利が引き起こす、さらなる円安の衝撃 24.11.13
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2024年の米国大統領選挙でトランプ大統領が再選を果たし、上院と下院でも共和党が勝利する「トリプルレッド」の可能性が出てきました。トランプ政権の復帰は、日本円に強い影響を与えると予測されています。特に、財政支出を積極的に拡大する政策が進められ、長期金利の上昇が続くことで円安ドル高の基調が一層強まると考えられます。
藤井厳喜 日本で始まった「巨大なバブル崩壊」
「日本ではあらゆるバブルが崩壊したが、唯一残っていた最後の円高バブルが今崩壊し始めている。
しかもこれにより、今後30年の日本の産業構造がガラリと変わってしまう。」
トランプ大統領の再選により、彼の強力な財政拡大政策が再び始動することが見込まれています。トランプ大統領はインフラ投資、減税政策、そして国防費の増大を掲げており、特に公共事業への多額の支出が米国経済を一時的に押し上げるでしょう。これらの政策は企業活動を刺激し、経済成長に貢献する可能性がある一方で、インフレリスクも高まることになります。
インフレが進行すると、FRBは利下げペースを見直し、金利水準を高止まりさせることが予測されます。これにより、日米間の金利差は拡大し、ドルの資産価値がさらに高まるため、投資家の資金が米国へ集中する傾向が強まります。こうして円は相対的に価値を失い、円安が進行する一方、ドル高が持続する可能性が増していくと考えられるのです。
既に市場ではトランプ大統領の再選と共和党の完全支配が確定する前から、「トリプルレッド」の影響が意識され始めており、為替市場では円売りが活発化しています。東京外国為替市場では154円台にまで円安が進み、さらに年末には1ドル=160円台も視野に入ってきています。
また政策実行の障壁が取り払われることで、トランプ大統領はインフラ支出や移民制限、関税政策など、経済成長を促進しつつもインフレ圧力を強める政策を迅速に進めることができるようになるでしょう。このような背景から、米国経済の成長期待が高まる一方で、金利の上昇圧力が加わり、ドルが強い通貨としての地位をさらに固め、円安ドル高の基調が続くという予測が支配的となっています。
この円安ドル高の流れが日本経済に与える影響も注目されます。円の価値が下がることで、輸出企業には一時的な恩恵が見込まれ、海外での競争力が高まる可能性があります。しかし、輸入品や資源価格の上昇により、企業のコストが増加し、家庭の消費生活にも負担がかかると予測されています。
さらに、円安が進むと、日本銀行が利上げや通貨介入などの政策対応を迫られる可能性も高まります。日銀が金融緩和からの転換を迫られることで、国内の金融市場や経済全体に不安定要素が広がりかねません。特に、日本の経済成長率が停滞している中での利上げは、景気の腰折れを引き起こしかねないリスクがあるため、日銀としては慎重な対応が求められるでしょう。
トランプ大統領が掲げる財政拡大と国防支出の増加は、過去の米国政権が繰り返してきたパターンを思い起こさせます。例えば、1940年代の第二次世界大戦中、米国は膨大な戦費を賄うために国債を発行し、戦争の長期化に寄与しました。また1970年代には、ベトナム戦争への軍事介入が国債発行とドルの増発に頼ったため、インフレと貿易赤字の問題を引き起こし、1971年のニクソン・ショックに至りました。こうした歴史的事例は、現在のトランプ政権の財政政策においても同様のリスクが潜んでいる可能性を示唆しています。
トランプ政権の財政支出が続く場合、米国の政府債務はさらに増加し、ドルの信頼性が試される可能性があります。ドルの信頼低下は、他の国々が代替通貨を求める動きにつながりかねません。ロシアや中国などの新興国は、ドルに依存しない貿易決済システムの構築を目指し、新興国を中心とした「商品裏付け型」の新通貨構想が進んでいます。こうした動きはドルの国際的な地位を脅かし、長期的にはドル安リスクが顕在化する可能性も否めません。
トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」政策は、短期的には国内産業の活性化と景気浮揚につながるものの、長期的にはドルの地位を揺るがしかねない影響を持ち得るのです。
経済学者の間では、トランプ大統領の再選による経済政策の影響について賛否が分かれています。あるグループは、財政支出の拡大がインフレリスクを高め、長期的には米国の経済基盤に負担をかけると警鐘を鳴らしています。一方で、短期的な経済成長を重視するグループは、トランプ政権の政策が雇用創出や経済成長に寄与するとして支持しています。
しかし、米国の政府債務がGDPの100%を超える見込みの状況下で財政支出を続けることは、持続可能な経済政策とは言い難いです。特に、トランプ大統領が掲げるインフラ投資や軍事支出の拡大は、さらなる国債発行を伴うため、将来的に米国経済が負担し続けるリスクが高まることは懸念材料として抑えておくべきでしょう。
このような米国経済の動きに対して、日本も慎重な対応が求められます。日米金利差が拡大し、円安が進行する中で、日本の輸出業界にとっては一時的な恩恵が見込まれるものの、輸入価格の上昇が家計や企業コストに影響を及ぼす可能性があります。日本政府や日本銀行がどのようにこの円安・ドル高に対応するかは、今後の日本経済の行方を左右する重要な要素となるでしょう。
また、日本銀行が金融政策の転換を迫られる場合、国内の金融市場にも大きな影響が及ぶ可能性があります。これにより、国内消費や投資が減少することで、日本経済が低迷するリスクも懸念されます。
トランプ政権の財政拡大と、それに伴う米ドルの信認低下の可能性は、国際的な貨幣制度にも影響を与えると考えられます。特に、ロシアや中国などが進める「脱ドル化」戦略は、米ドルの代替として新しい通貨や商品裏付け型の貿易決済システムを構築しようとする動きを加速させています。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国は金などの商品を裏付けとする新たな通貨を創設し、ドルに代わる国際決済通貨とする構想を打ち出しています。
こうした動きは、国際経済の構造を変え、米国の金融政策が他国に与える影響を減らす方向へと進んでいます。もしもBRICSが新しい国際決済通貨を実現すれば、米ドルへの依存が弱まり、円安ドル高の進行も緩やかになる可能性があります。しかし現状では、ドルが依然として最も信頼される基軸通貨であり、その信頼性が劇的に低下する兆しは見えていません。
円安の加速は、日本経済にとって一時的な恩恵と同時に課題をもたらしています。例えば、輸出業は円安により価格競争力が増し、業績向上が期待されますが、円安による輸入物価の上昇は企業や消費者に負担を強いることになります。特に資源の多くを輸入に頼る日本にとって、輸入価格の上昇が製品価格に転嫁され、物価が上昇する可能性が懸念されます。
さらに、日本政府と日本銀行がどのように対応するかも注目されています。通貨当局が円安の進行を抑えるために為替介入を行う可能性もありますが、その効果が持続するかは不透明です。また、日銀が追加利上げに踏み切ることで金利差を縮小し、円相場を支えるというシナリオも考えられますが、利上げは国内の景気に対する悪影響も避けられないでしょう。
トランプ大統領が再選を果たしたことにより、米国の政策が大きく転換される可能性が高まっています。トランプ政権は減税やインフラ投資、軍事支出の増大を柱にした政策を推進する意向を表明しており、こうした政策は短期的には米国経済を活性化させるでしょう。しかし、こうした財政支出拡大はインフレリスクを伴い、長期的な経済安定に不安を抱かせます。
米国のインフレ率が上昇し、FRBが利下げペースを見直すことで、円安ドル高の流れが続くと、日本市場にもさらなる影響が出るでしょう。投資家は米ドル資産へのシフトを強め、日本の株式市場にも資金流出の圧力がかかる可能性があります。これに対し、日本政府は円安を食い止めるための政策を検討すると共に、国内消費や生産の維持に向けた経済政策を模索していくことが重要です。
トランプ大統領の再選がもたらす影響は米国だけにとどまらず、世界経済全体に広がる可能性があります。財政支出拡大によるドル高円安の進行や、他国の脱ドル化の動き、そしてインフレ率の上昇など、複数のリスク要因が絡み合い、為替相場や国際経済に不確実性をもたらしています。
このような状況下で、日本企業や投資家は、円安ドル高に対するリスク管理や、世界的な経済変動に備えた戦略が求められます。また、日本の個人投資家や企業がドル資産をどのように活用するかも、今後の日本市場の安定に関わる重要な要素となっているのです。
ドル高円安の進行により、国際市場は常に動いています。投資家として、この動きに追随するだけでなく、リスク管理と柔軟な戦略を持ち、長期的な視点で資産を守ることが大切です。日本経済が変動する今、海外資産への分散や為替リスク対策を講じながら、安定的な成長を目指す戦略が求められています。
筆者自身は、米国だけでなく新興国投資への比率を高めながらも、キャッシュポジションを多くするなど、時に何もしないことも冷静な投資態度であることを念頭にマーケットと向き合っています。