光ファイバー関連で米国株価急伸の背景は? 2025/08/05
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#石原順 4割以上が米国に集中する世界のデータセンター データセンターのゴールドラッシュ、テック系大企業が投資を拡大
世界経済フォーラムのWebサイトに「This is the state of play in the global data center gold rush(世界的なデータセンターの「ゴールドラッシュ」、その現状とは)」と題するコラム(4月24日付)が掲載されている。データセンターは単なるデジタルインフラではなく、高価値の投資資産でもあり、インターネットとデジタル経済の屋台骨だと指摘している。
デジタル経済が爆発的に成長していることにより、データセンターが前例のないペースで増えている。コラムによると、現在、世界のデータセンター業界の市場規模は2427億ドル程度と推定されており、2032年までに5840億ドル以上に倍増すると予測されている。アマゾン、グーグル、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズといったテック系大企業が先頭に立ち投資を拡大している。
こうした施設は、世界のインターネットトラフィック(インターネットを通じて送受信される情報)の95%以上を処理していると推定され、数十億人のユーザーにリアルタイムの接続を提供している。また、データセンターは経済的競争力を左右するだけでなく、国の経済安全保障にも欠かせない重要なインフラとなっており、各国政府はデータの主権と管理をますます優先するようになっていると述べている。
こうした通信を支えているのが世界中の海底に張り巡らされた「海底ケーブル」だ。経済産業省のウェブマガジンMETI Journalの7月30日付けの記事「政策特集丈夫な経済のお守り 経済安全保障vol.5 “データの大動脈”海底ケーブル 日本への『信頼』テコに世界シェア拡大目指す」によると、世界中の海底には約500本、総延長約150万キロメートルの海底ケーブルが張り巡らされており、世界シェアの9割をフランス、米国、日本の主要3社で分け合っているという。
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データセンターのキャパシティの推移と前年比変化率 コーニングの売上高と最終損益の推移
海底ケーブルに使われる光ファイバー市場は成長フェーズに突入
インターネットなどの通信データを送るために海底に敷設された「海底ケーブル」には光ファイバーが使われている。かつては衛星通信が主流であったが、データ量や速度で優れていることから、現在は海底ケーブル通信が国際通信の約99%を担っている。一方で、国際データ通信量の急増や海底ケーブルの切断事故の多発を背景に、世界的に海底ケーブルの敷設船が不足しているという。
そうした中、脚光を浴びているのが米国企業のコーニングである。コーニングは1851年に設立、液晶ディスプレイ用ガラスパネルや光ファイバーなどを手がけている。現在、光ファイバーと液晶・有機EL用ガラス基板で世界シェアトップにある。株価は52週間の最高値の63ドル台に達し、直近の時価総額は500億ドルを超えた。株価は過去1年間で約6割上昇しており、パフォーマンスは好調だ。
コーニングが7月29日に発表した2025年第2四半期の業績は、売上高と利益ともに市場予想を上回った。高速のデータ通信に使う光ファイバーなどの需要が拡大していることを背景に、2025年後半に向けても好調な業績が続くとの見通しを示した。
決算発表資料によると、コーニングは全米の15州に34の生産拠点を持っている。米国で販売される製品の約9割を国内で製造していると言われている。このため、トランプ関税の影響をあまり受けないであろうことも注目に値するポイントだ。
コーニングのウェンデル・ウィークスCEOは米国の先端製造拠点を活用する流れが「今後数ヶ月で追加の成長要因になる」との見通しを示すとともに、「総じて、当社は2026年以降も持続可能な成長を実現する立場にある」と述べた。
5月にはブロードコムと提携し、AIデータセンターの処理能力を加速させるイーサネットスイッチ(複数のコンピューターやネットワーク機器を接続し、イーサネットネットワークを構築する際に、データ通信を効率的に中継する集線装置)を提供すると発表した。このコラボレーションは、消費電力とコストを抑えながら、これまでにない速度と帯域幅の集中化を可能にする光接続ソリューションになるとしている。
AIを中心としたデータセンターインフラへの転換に伴い、光ケーブル、光ファイバー市場は成長フェーズに突入している。今後も堅調な拡大が予想されており、コーニングはもちろん、日本の株式市場においてフジクラや住友電気工業、古河電気工業などの電線関連株が堅調に推移している。