Collective Intelligence Project White Paper
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**1. 集合知(Collective Intelligence)と変革的テクノロジー(Transformative Technology)**
CIP(Collective Intelligence Project)は、社会を大きく変革し得るテクノロジーのガバナンスを研究・開発するインキュベーターである。集合知とは、集団が共有の目標を設定し、協力してそれを達成する能力のことで、民主主義や市場など、社会を形作ってきた制度やメカニズムの根幹を成す。
**2. 変革的テクノロジー・トリレンマ**
変革的テクノロジーは、高度なリスクと恩恵を伴い、ガバナンスにおいて以下の3要素を同時に満たすのが難しい「トリレンマ」を引き起こす。
- **進歩(Progress)**:技術を推進し、イノベーションを促す。
- **参加(Participation)**:幅広い市民が開発や意思決定に関与する。
- **安全(Safety)**:技術がもたらすリスクや害を最小化する。
既存のモデルは、この3要素のうち1つを犠牲にしがちだ(資本主義的加速、権威主義的テクノクラシー、進歩を抑えた停滞の共有)。CIPは、この3要素をできる限り両立させる「第四の道」を探る。
**3. CIPのアプローチ:集合知R&Dと「CIスタック」**
CIPでは、以下2つの観点を中心とした「CIスタック(集合知の階層)」を強化する。
1. **価値の集約(Value Elicitation)**
- 人々の多様な価値や意見を大規模・高精度に取り込み、合意形成や社会的意思決定を支援する技術・プロセスを開発・検証(例:Pol.isやリキッドデモクラシー、デリバラティブ・デモクラシー、予測市場、Quadratic Voting など)。
- AI言語モデル等を組み合わせ、より大規模な討議・合意を促すしくみを試行。
2. **テクノロジー組織の再構築(Remaking Technology Institutions)**
- 既存の「ベンチャー投資によるスタートアップ」モデルに代わり、安全性・公共性・収益性を適切に両立する新たな組織形態や資金調達手法(例:CIコーポレーション、パーパス・トラスト、協同組合、DAOなど)を探求・実装。
- AIを含む変革的テクノロジーの開発・配分におけるインセンティブ設計や利益分配の仕組みを検討する。
**4. 今後の展望と参加の呼びかけ**
CIPは、研究開発だけでなく実際のパイロットプログラムや新たな実装プロジェクトを通して、集合知の実用性を検証し、拡張を目指す。また、さまざまな団体・研究者とのネットワーク作りや、集合知プロジェクトを包括的に整理する「Collective Intelligence Almanac」の作成にも注力している。
CIPは「Paleolithic emotions, medieval institutions, and god-like technology(旧石器時代の感情、中世の制度、神のようなテクノロジー)」という人類の矛盾を乗り越え、新しいガバナンスの形を実現しようとしている。そのために多様な関係者の参加を歓迎し、ミクロからマクロへと広がる集合知の実践と実装を目指す。