What can I do in society as an artist?
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《Q:アーティストの自分は、社会の中で何ができるのか?》
アーティスト・彫刻家である自分が社会への寄与として展開する活動のエッセンスは、
①「体性感覚」
②「社会を捉える眼」の2つです。
「体性感覚」は、フィジカルな認識を基に実際に素材(実物)に触れることで、自らの手を用いて物理的なハードウェアを作り出す能力だと考えています。また、「社会を捉える眼」とは、個人の哲学を協調させながら、一般社会の中で他者と協働していくSEA(ソーシャリー・エンゲイジド・アート)を実践できる能力です。
私は、芸術の真理とは、より高い自己理想としての「身・口・意」に合致した表現をすることだと考えています。その観点から見た適切な社会とは、個に根差した表現活動の受容、ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)が機能している共同体・環境の中で生きることです。私たちは現実世界の物理的環境に身を置きながら、表現と鑑賞のコミュニケーションを通して、豊かさを感受できる社会へアップデートしていく。その先には多様な在り方を受け入れるカルチャーの醸成、時代を超えた社会的価値に繋がると考えています。
※身口意:仏教の用語。三業。やること(身)、言うこと(口)、思うこと(意)
①「体性感覚」
体性感覚とは触覚や圧覚、位置・動き・力の感覚などのことです。視覚情報に合わせて手接触を通した身体感覚情報を一致させ認識することにより、より正確な体性感覚を身に付けることが可能になります。人間の空間認識能力は自分の体性感覚を通して経験によって養われるものであり後天的なものです。例えば、乳児が手を伸ばして母親の顔を触れる時、他者の存在を知り、自分の腕の長さを知る。これらは人間が生み出すクリエイティブにとってリアリティの根源であり実社会に生きる実感そのものの能力だと考えています。一方で現代社会において一人の人間の力では不可能なモノを動かすといったことは機械や重機といった間接的接触で成り立っています。そういう意味で言うと、現代社会ではモノの重量・体積・バランス・構造など実際に感じ取る機会は日常から遠ざかっています。例えば、自身の彫刻制作において原木をテコで移動する作業や、チェーンブロックで吊り作業(玉掛け)を行う際にはバランスを保つワイヤーの位置、重心を取ることが必要です。例えば、自然木の木目の詰まりが様々で、場所により重さと硬さが異なります。根株部分は特に顕著です。密度の異なる質量が混在している物体の持つ重心を把握するといったスキルは、人づての知識(形式知)によって向き合うだけではとても成り立たちません。モノのバランスや重心の把握といったものは、スポーツ選手の能力獲得と同じく自らの身体を通して肌感覚でモノの実際と向き合うことがスキルを高める第一歩です。その個人の経験の積み重ねが知恵(暗黙知)であり、体性感覚を実際に身に付けることができるのです。
②「社会を捉える眼」
社会は人間の集合体であり、様々な要素が入り組んだ構造上で生み出された集合的価値、すなわち一般性を持っています。一方で芸術とは個人の独創性によって成り立っています。その上で新たな未来を構想しながらも個としての表現に基づき創造・実践といった活動を展開するためには、現代社会を多角的に把握する眼を持つ必要があると考えています。その為には2つの眼、すなわち普遍的様相を捉える観察眼と、自らを観測点とした主観です。身体を通した行為から対象を深く捉える観察眼と、独創性の下支えとなる主観的物差し(スケール)から対象を観察する。一般性と独創性その両方の観点から社会を捉えようとする眼は、諸環境においての様々な課題に対して、アート的思考・機能という特殊性の視座を持ちます。その特殊な視座こそが重要であり、現代社会に漂う閉塞感を打開する新たな可能性を見出す役割を担うことができるのではないでしょうか。
What can I do in society as an artist?
As an artist and sculptor, the essence of the activities I develop as a contribution to society are
(1) "Somatic sensation"
(2) "Eyes to perceive society"
I believe that "Somatic sensation" is the ability to create physical hardware with one's own hands by actually making contact with materials (actual materials) based on physical perception.
The "Eyes to perceive society" is the ability to practice Socially Engaged Art (SEA), which is the ability to collaborate with others in the general society while keeping the individual philosophy coordinated.
I believe that the truth of art is to express oneself in a way that is consistent with one's "body, mouth, and will" as a higher self-ideal. From this perspective, an appropriate society accepts expressive activities rooted in the individual and lives in a community or environment where social integration functions. We will update our society to one in which people can experience richness through the communication of expression and appreciation while immersed in the physical environment of the real world. We believe that this will lead to the cultivation of a culture that embraces diverse ways of being and social values that transcend time.
*Body, mouth, and will: Buddhist terminology. The three karmas. Doing (body), speaking (mouth), and thinking (will).
Written by MORI Hideaki
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