Statement
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-Attitude- 表現と姿勢について
《彫刻》
- 満ちて、顕れること -
満ちていくこと(月を見る構造)
自らと対象との関係性が成立している距離を保ちながら、存立可能な形象を生成(内化:internalization)すること。
顕れること(見立ての構造)
質料性から顕れる要素に加え、対象を自らの左右の目それぞれで捉えた範囲、その2つの円相で対象の存在を捉え、立体形象と動的に向き合うことで対象に刻々と生まれる円相群を刻みつつ、円の持つ正鵠から垂直に量塊内部を貫く射線群、すなわちその離心円それぞれの持つ主点が集合する焦点を指向しつつも、その過程で発生する中動態での対象の感受(見立て)による顕れを、物性を有する形象として生成(外化:externalization)すること。
- 表現と研究 -
私は木造彫刻制作を中心に表現を展開しています。以前より彫刻における立体造形要素の探究において、正円の特性である求心性、私はそこに彫刻造形の新たな可能性を感じ始めています。立体形象(彫刻)の持つ外殻は表面によって構成されていますが、その表面の上に中心位置の異なる複数の正円を描き輪郭を彫り出します。そして、その円同士の持つ円弧上の接点を中心に新しい正円を描き輪郭を彫り出していきます。その過程を繰り返し、外殻すべてを正円で包み込む手法に取り組んでいます。現在のところシンメトリーな立体形象でのみ試験的に完成までたどり着いていますが、実際に彫る過程において非常に手数が掛かる手法であり、再現可能なアルゴリズムまで達していません。
視覚・触覚といった身体性に視座を置き、物質と立体形象の美的波長を見出していくことは、スキルのアウトソーシングでは成り立たない領域です。研究活動においては、この手法を継続的に探究していくことが、私にとっての生きた身体性の確保であり、人類の培ったアート、そして人が豊さを感じて生きていくためのリベラルアーツに携わる表現者・研究者としての態度だと考えています。
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付記:豊かさの感受について
ーARTs(芸術)は身を以て知る扉ー
現代社会は過去の経験則で予測しにくい未来へと変容しています。それは旧弊な共同体で培われた価値観や人生の模倣だけでは時代と歯車がかみ合わず暮らしの最適解を導き出しにくい社会でもあります。先頭を切るプラットフォーマー(基盤提供事業者)たちが提案するイノベーションは時代に即した新たな価値観を生み出します。一方、人々の日常では「新たな物事の信憑性」や「正解が不可解である現実」に対し不安や閉塞感を感じることもあるのではないでしょうか。その中であっても豊かさを感じる暮らしとはどのようなものでしょうか。
個人の豊かさは本質的に数値で表せません。GDPといった統計学による全体の豊かさ指標はありますが、実感が伴うことは少ないでしょう。なぜならば、豊かさとは人の心が感じるものであり、心身を通して感じて初めてその意味を成すからです。
ARTsとは人間が生み出すもの、人間の可能性そのものです。自分の中に可能性を感じるとき、心は豊かさを感じ取るでしょう。自分を取り巻く世界に興味を持つことは「今」を感じて自ずから然る(おのずからしかる)ことです。心身を通して世界を知り明日を生きるエネルギーを生み出す。ARTsにはその力があります。
Written by MORI Hideaki
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