ここじゃない世界に行きたかった
辰巳渚さんの『ミニマリストという生き方』という本では、あの小島よしおさんがミニマリストとして取材を受けている。本人はミニマリストの自覚はなかったらしいが、なんでも彼は、トレーニングマシーンを家に置き、外国人とシェアハウスで暮らしているらしい。こうすることで、ジムに通う時間や、語学学校に通う時間をカットできるからだ。目的のために最適な設備を確保して、ミニマルに、効率的に生きているのだ。 “識字憂患”—つまり「人生字を識流は憂患の始め」というのは、中国北宋代の政治家であり文豪でもある蘇軾の言葉だ。これはつまり、人は文字を学び、書物に触れることで悩んだり苦しんだりしてしまうから、無知でいたほうがよほど楽だったのに!という話なのである。 私にできるとても小さな一歩として、ここしばらくは執筆した記事に不安があれば、科学者に内容を確認してもらっている。自分がなんとなく「エコだなぁ」と取り上げたものが、ただのグリーンウォッシュであることは少なくないのだし。 あたりまえに生きるための言葉を取り戻す。
出会うべき誰かと強く惹かれあうために――。
「バズライター」が自分を取り戻すために綴り続けた文章は、ゆっくりと静謐で美しかった。ここじゃない場所へ移動できないときにも、世界を閉ざさないためのしなやかな本がある。 日本の内側にも外側にもぽんぽんと弾んで飛びだしてゆく、ゴムまりを思わせるエッセイ集。まっすぐに思索し、いまという時代を映す勇敢なゴムまりである。 世界の諸問題への視点と生活への美意識が胸を打つ、〈多様性の時代を象徴する〉新世代エッセイ集! https://gyazo.com/49217bd55e2e56c8a536d7c189f30fd7