subtech
サブカルチャとは、主流文化に対して下位に属するとされる風俗や思考・行動様式を共有する集団の織り成す生活のあり方全般を差すものであり、対抗文化と訳されるカウンタカルチャともときに同一視される、本来は政治的・社会学的な概念であった。しかし、資本主義の成熟・高度情報化社会の到来によるメインカルチャとサブカルチャとの境界の喪失が、世界的な観点から見てもどこよりもラディカルに進展した 90 年代日本において、サブカルチャという言葉はその本来の含意を失い、「サブカル」というある特定の時代の特定の文物を指すものとしての略語にのみ、その残影を見ることができる。
一方、コンピュータの高速化・低廉化、あるいはブロードバンドの普及による低価格・高品質な通信インフラの一般化により、それまでは並はずれて高度な知的好奇心を必要とし、多大な経済的負担を払わなければ得られなかった知識・技能・環境が誰の手にも届くものとなり、結果、アイディアを持つ者がそれをストレートにネットワーク上で表現することが可能となった。この、メインカルチャ( = 旧来の難解なコンピュータを取り巻くあれこれ)に代わって登場した、現代の新たなネットワークがもたらした知的環境が可能とした技術文化を、言葉の真の意味でのサブカルチャと捉え、また、90 年代が意味を付与した「サブカル」という響きに表される楽しさ・ユーモアを技術的表現に見いだしていく態度、それを我々は「サブカルテクノロジ」と名付ける。