SDM(共同意思決定)
定義:
共同意思決定(Shared decision making: SDM)とは、精神科医療サービスの利用者と医師(専門家)が治療ゴールや治療の好み、責任を話し合って、2人で適切な治療を見つけ出すことです1,2)。
共同意思決定とは、医師などの専門家と精神疾患の当事者が、治療のゴールや希望、治療における互いの役割について話し合い、共に適切な治療を見つけ出すことです。当事者に薬や治療の選択肢について説明し、希望を聴き取るために、書き込み式の冊子やアプリなどのツールを用いることもあります。近年の精神科治療においては、専門家と当事者のパートナーシップが大切にされており、共同意思決定はそれを促進すると考えられています。また、当事者には治療について自分で決める権利(自己決定権)があることからも、共同意思決定を行うことが推奨されています。
精神科医療における事前指示(Psychiatric Advenced Direcitve)
自分が有効な意思表示ができなくなった場合を想定し、あらかじめその際の医療等について要望をまとめておくものを事前指示AD(advance directive)といいます。これを精神科医療においても作成、利用しようというのが精神科事前指示PAD(psychiatric advance directives)です。
ただし、欧米におけるPADでは、その有効性や有効範囲などについて法律で定めているのに対して、今のところ日本ではこうした制度はありません。
そこで精神・神経疾患研究開発費において司法精神医学研究部では、法制度はないながらも、このPADの考え方にならった本人の事前指示を確認するツールとして「精神科医療緊急時の事前指示の覚え書きLIME(Letter of Intent for Mental Health Emergency), 2014年」を提案することにしました。これはあくまでも本人の気持ちや希望を確認をする「覚え書き(letter of intent)」にとどまります。PADのような法的効果を前提とする書類ではありませんが、こうした本人の考えを本人も周囲も確かめておくことが、より患者の自立性を尊重した治療につながるものと考えます。また将来的に、日本でもPAD等の制度を導入すべきか、するとしたらどのようにするのがよいのかという議論にも役立てることができると思います。