JPR2019後期の解説と、Q&A
概要
2019年7月から12月までに開かれた国内、海外の主要な大会を対象に、それぞれの大会の各順位に対してポイントを割り当てる。各プレイヤーは大会に入賞して獲得したポイントを獲得することができ、最終的に獲得したポイントの中から上から4つを合計した値がランキングポイントとなり、ランキングポイントを高い順に並べると最終的なランキングになる。
簡単に言うとテニスの世界ランキングの作り方と同じ。
Q&A
各大会、各順位のポイントをどう決めるか
これは、その期間の大会数や規模によって変える必要があるため、一概にこうすれば良いというやり方はない。
基本的には考える要素は3つ
全大会共通で、各順位ごとの点数の比率を決める。これは、大会規模問わずすべて同じで大体うまくいく。
2019後期では、優勝したときのポイントを基準として、ランキングが1つ下がるごとに0.75倍になっていくようにした。
EGS Cupのように、極端に上位勢に偏った大会では、特別に比率を変えるのはありかもしれない。
参加者から、各大会のレベルの高さを数値化(Tournament Tier Point, TTP)して、Tierわけ。
総参加者数と、前期JPRランカーの参加者数で決める。
なので、最初にランキングを作る時はランカー要素が入れられないので、難しい。
TTPから、実際にプレイヤーが獲得するポイントを計算する関数を作る
TTPから作るのは優勝ポイントだけ。優勝ポイントと点数の比率があれば、全順位のポイントが求められるため。
主にここでランキングの微調整を行う。実際に計算してみて、あまりにもおかしい順位があればポイント計算関数を調整する。
主にレベルの高い地域の大会数によるランキングの乱れを整える作業になる。
TTPや倍率を変えて微調整してもいいが、主にここでやるほうが楽。
JPR2019後期ではやらなかったけど、地域ごとの補正をしてもいいと思う。例えば、レベルの高い地域の大会数が極端に少なかった場合には、その地域のポイントだけ1.25倍するなど。
これらは、期間中すべての大会が終わってからの"事後計算"かつ"事後公開"となる
公平性という観点ではかなり微妙だが、そうせざるを得ない理由がある。後述
国内ランキングなのになぜ海外も入れるのか
簡単に言うと「そのほうが多くの人から見て直感的に正しいランキングになるから」。逆に言えば「国内大会の結果だけではおかしなランキングになるから」。
多くの人が「海外大会で活躍する=強い」と思っていれば、海外大会を入れるのが妥当になる。
スマブラ4最初のランキングはここを見誤ったとも言える。
野球の話に例えると、「日本人で最も多くのヒットを打った野球プレイヤーは誰か」と言われれば、多くの人がイチローを思い浮かべると思う。しかし、日本国内のプロ野球の記録だけに絞れば張本勲の方が多い。この場合、多くの人が直感的にイチローを思い浮かべるのであれば、国内だけでなく海外(大リーグ)の記録も含めるべきだろう、という判断になる。
一方で、例えば日本や大リーグよりもレベルが低い(と多くの人が思っている)リーグでイチローよりも多くのヒットを打ったプレイヤーがいたとしても、多くの人がそのプレイヤーを「ヒットキング」だと見なさないのであれば、そのリーグの記録は考慮に入れるべきではないという判断になる。
これは、「世界で最も多くのホームランを打ったプレイヤーは誰か」と言われて、アメリカ人が王貞治を思い浮かべないのと同じ。
システム的には、海外大会の中でPGRのA tier以上のものを考慮に入れる
そのため、アメリカだけでなくメキシコやヨーロッパの大会もたまに入る。
なぜ上から4つのポイントだけを合計するのか
もし単純に獲得したポイントをすべて合計すると、大会に出れば出るほど最終的なポイントが積み重なっていく。これは、プレイヤーに大会出場を促す効果があるメリットがあるが、各地域の大会に遠征できる時間的/金銭的に余裕があるプレイヤーが有利になりすぎ、本来ランキングが目指したい「強い順」ではなく「大会に出たもん勝ち」になってしまう。
なぜ4つかというと、現在の日本国内で、半年間で各地域で行われる主要な大会の数が大体3~5程度なので、遠征しないプレイヤーでも自分がいる地域の大会でいい結果が残せれば高い順位を目指せるようにという意味で4とした。
「主要な大会」とは何か
まぁB以下の大会はほとんど日本人が出場しないので正直どちらでもいい。
国内については「その地域の一番を決める規模の大会」というざっくりとした基準がある。
昔は大会数が少なかったのでこの基準でも良かったが、昨今のスマブラ大会がどんどん増えているので、そろそろPGRのようにガイドラインを出す頃合いかもしれない。
なぜ平日大会は入れないのか
まずそもそも、数が多すぎて集計がめちゃくちゃ大変。
平日大会の雰囲気と会わない。平日大会はガチガチの競技の場というより、緩い雰囲気で交流を楽しみつつ大会を行うことが多く、ランキングに考慮を入れることでこの文化を壊してしまう恐れがある。
まぁそもそも「平日大会の雰囲気が緩いのはランキングに考慮されていないからだ」という「鶏が先か、卵が先か」的な側面もあるが…
平日大会は夜に開かれることが多いが、仕事や学業の都合であまり参加できないプレイヤーや、条例による年齢制限で18歳未満が出場できなかったりするので、有利不利が発生してしまう。
なぜランキング計算式が大会後に作成され、事後公開なのか
大会の供給が安定していないから。もし、全大会の行程が1年位前にわかっているなら、テニスのように事前に全ての情報を開示できるが、実際には大会の供給が時期によってまちまちなので、大会数や規模によって地域差が生じる。事後に作成/公開することで、地域差の微調整を行う。
例えば、何らかの形で関東の大会が少なくなる(または多くなりすぎる)と、関東のプレイヤーが不利(または有利)になる。本来ランキングはプレイヤーの強さによって決まるべきなので、大会の供給による影響はなるべく抑えたい。そこで、全大会の結果が出そろった後で、調整を行う必要がある。
言うまでもなく、公正性という観点では、ランキング作成者がランキングをいじれてしまうので非常によろしくない。スマブラ界隈はまだ公正性を保てるほど界隈が成長していないので仕方が無いというのが私の立場。
ELOレーティングなどのレーティングシステムでランキングを出すのはどうか
実際に計算してみると、上手くいかない。主な原因は、試合数が少なすぎることと、プレイヤーが出場する大会に偏りがある(遠征するプレイヤーが少ない)からだと思われる。
有志が作った、テニスの試合結果をELOレーティングで計算したランキングがあるが、これは(素人目から見ると)それなりに良いランキングになっているように見える。これは、テニスのトッププレイヤーの試合数が多いこと(年に20大会以上)、地域の偏りがない(みんな遠征する)からだと思う。
JPRを作る上で一番むずかしい点はどこか。
地域間の差をどのように実際のポイントとして重み付けするか。