自律神経の揺らぎと健康
日本統合医療学会誌 6(1), 54-59, 2013-05
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George Brayにより提唱されたMONA LISA説(Most Obesities kNown Are Low In Sympathetic Activity)、即ち、交感神経活動の低下と肥満とが密接に関連しているという考えは動物実験などから支持されてきた。中年男女性に認めら れる”中年太り”は加齢や閉経に伴う自律神経活動の低下と強く関連しており、高脂肪食や不規則な食事パターンに よっても熱産生に関与する自律神経活動が影響を受ける可能性が考えられる。我々の一連の研究から、自律神経活動 は可逆性を持っており、脂質代謝や食欲調節機能の中枢である自律神経活動の低下に起因する中年肥満も習慣的な運動の励行によって予防できることが強く示唆されている。つまり、習慣的な運動は糖代謝亢進のみならず肥満や食欲調節機構に作用する自律神経活動の亢進効果も備えており、食事療法とともに不可欠なものである。 keywords
血圧調節に関連
呼吸によって生じる心拍のゆらぎ
心拍変動少なく、HF成分がほぼ消失
糖尿病性自律神経障害の重症度に伴って
トータルパワーの有意な減衰
心筋脱 分極・再分極時間及びQT間隔時間の遅延
MONA LISA説(Most Obesities kNown Are Low In Sympathetic Activity) George Bray提唱
交感神経活動の低下と肥満とが密接に関連
安静時の自律神経活動
加齢や運動習慣、疾患の有無、喫煙習慣、肥満度などにより大きく異なる 身体・精神症状から社会・行動上の 変化に至るまで広範囲に亘る症状が、黄体期後半に繰り返し出現し、月経開始後数日以内に軽快
PMS群では卵胞期と比較し、黄体後期のTotal powerとHFが有意に低下
黄体後期特有の複雑な心身不快症状の発現に自律神経活動動態が関与
体内環境の恒常性維持に寄与し、心の状態にも影響を及ぼす
Nagai et al.
対象:1080人の児童
自律神経活動に対する肥満と運動習慣の影響について検討
肥満児では非肥満児と比較してLF成分、HF成分とも有意に低下
同程度の肥満でも習慣的な運動習慣を有する児童では、運動習慣なしよりもLF、HFが有意に高値
対象:小学校の全児童(305 名)
1 年間の運動介入(心拍数130- 140拍/分、20分/日、 5 回/週)
介入前に自律神経活動が低下していた児童は、すべての自律神経活動の評価が有意な改善
自律神経活動は可逆性を持っており、脂質代謝や食欲調節機能の中枢である自律神経活動の低下に起因する中年肥満も習慣的な運動の励行によって予防できることを強く示唆