小児の足の機能的左右差に関する発育発達的一考察
雑誌名 放送大学研究年報
巻 7 ページ 143 - 154 発行年 1990-03-30
ISSN 0911-4505
結語
小学校児童を対象に,ピドスコープとスタシオアナライザを用いて,直立姿勢を保持したときの接地足底面の形状,重心動揺面積ならびに総軌跡長,接地足底面積ならびにその変動係数を測定し,それらの値から児童の直立能力を評価した.そして,その中で特に左足と右足の機能的左右差に着目し,発育発達との関係について考察を加えた。 その結果,以下のことが判明した.
1)接地足底面の形状は,小学校就学時にはほぼ成人のそれに相当するものであった.ただ土踏まず部の接地幅は足の大きさに左右されないことから,今後,この部分の形状と 運動能力や体力等との関係を検討すべきであると考えられた.
2)足長を100としたときの踵からの重心位置は年齢,性に関係なくほぼ38%あたりに位置していた.1970年に測定調査した一般健常成人は47%であったが,今後重心位置が足先に偏位し47%に達するとはにわかに信じ難く,成人しても40%付近にあるものと考えられた。
3)重心動揺面積ならびに総軌跡長,接地足底面積の変動係数は,年齢にしたがって小さくなり直立能力が向上することが明らかとなった.なおその変化は特に6~8歳において顕著であった. また女子の方が男子よりもその値が小さく,直立能力が高いことが判明した.
4)接地足底面積ならびにその変動係数から,右手利きであっても,右足支持機能優位であることが示唆された.一般健常成入は左足の方が支持脚として優位に働いていることが確認されており,また発育発達にしたがって右から左に移行することが確認されていることから,今後,支持脚が徐々に左側に移行するものと考えられた。ただ,支持脚の定義にはまだ検討余地が残されており,さらに詳細な調査,研究が必要である.