安定かつ柔軟なヒト直立姿勢の神経制御仮説
野村 泰伸
バイオメカニズム学会誌, 2015, 39 巻, 4 号, p. 185-195,
公開日 2016/04/15, Print ISSN 0285-0885,
抄録
本解説では,静止立位姿勢および定常二足歩行の間欠制御仮説と,それに関連する最近の研究を紹介する.特に,これらの運動を生成する神経制御が実現すべき運動の特徴として,(1)直立姿勢あるいは周期的歩行(歩行サイクル)の平衡状態からの偏差の時間的変動(運動揺らぎ)として表出する関節の柔軟性,および,(2)運動揺らぎの時間パターンが示すフラクタル性あるいはべき乗則に従う長期相関に注目する.さらに,直立姿勢の安定性に関して,(3)体性感覚情報の神経伝達時間に起因する時間遅れ誘因性不安定化(delay-induced instability)を回避する姿勢制御メカニズム,および,(4)対応する制御器のパラメータ変化に対する姿勢安定化メカニズムのロバスト性に関して議論する.運動計測データに表出する(1)およ(2)の特徴は,(3)と(4)に関わる姿勢の安定化メカニズムが機能した結果として生成されると考えられる.そこで,本稿では,安定性と柔軟性という一見相反する運動特性を実現する制御戦略の有力候補の一つである間欠制御仮説に関して議論する. キーワード:
intermittent postural control
intermittnet Gait control
持続的な制御ではなく間欠的制御
静止立位の能動的神経制御
健常者:ゆらぎ大
柔軟な制御
0.05-1Hzの低周波帯域
1-10Hzの高周波帯域
硬直