健常者における足アーチ高の標準値の確立に関する研究
研究報告書 / Research Paper
言語 日本語
著者 尾田 敦
著者別名 Oda Atsushi
著者所属 弘前大学大学院保健学研究科
内容記述 平成17年度~平成19年度科学研究費補助金(基盤研究(B))研究成果報告書 ; 課題番号:17300215
引用 114p ; 30cm
発行年 2008-03
権利 p.1-5の論文は「青森県理学療法士会」の許諾に基づき掲載
NIIサブジェクト 社会医学
出版者 弘前大学大学院保健学研究科
はしがき】
2004年10月10日,文部科学省が行った2003年5月~10月までの調査において,6歳から79歳の男女 を対象に,約7万2000人分のデータを集計した結果,スポーツをほとんどしない子どもの運動能力が20 年前と比べ,大幅に低下していることが2003年度「体力・運動能力調査」で示された。調査では, スポーツをする頻度に応じ,11歳の男女を「ほとんど毎日」,「週1~2日以上」という週1日以上と, 「月1~3日程度」,「ほとんどしない」という週1日未満のグループに分け,1983年度と50m走,ソフ トボール投げの記録を比較しているが,両グループとも男女いずれも20年前より記録が下がったが, 週1日以上の男子は,50m走の平均が8秒84と0秒17の落ち込みにとどまったのに対し,週1日未満で は9秒41と0秒41秒も遅くなり,グループ格差が広がったとしている。男子のソフトボール投げでも, 週1日以上(平均31.39m)は落ち込みが3.37mであったが,週1日未満(平均23.88m)では7.1mも記 録が落ち,女子も両種目で,週1日未満のほうが落ち込みが顕著であった。6歳と8歳でも同様の傾向 であったとしている。
小学生では,足部のアーチ形成の程度が低いと50m走では1秒以上もタイムが遅いことが既に指摘 されており,今回の調査結果は小学生の運動機会が減ったことで足部アーチの形成に影響を及ぼして いると考えられる。しかし,アーチの形成の程度を正確に評価したデータがなく,その標準値も明確 に示されていない。足アーチは12歳頃までに90%が成人のパターンになり,それ以後はあまり変化 がないともいわれている。 足アーチの評価には,骨格構造評価であるアーチ高率と足底接地状況を観察するfootprintが臨床 的に多く用いられている。上述したように,アーチ形成の程度が運動能力と関連性があるとされてい るものの,その標準値を提示している調査報告はない。扁平足は種々の障害を生じやすく,その判定 の材料となるべくデータを蓄積することによって,障害の発生の予測や運動能力の予測が可能となる と考えられ,意義が大きいと思われる。 足部アーチの評価におけるGold Standardは,やはり横倉法に代表されるようにX線撮影による方 法である。しかし,健常者では倫理的な問題からこのような方法では不可能である。 骨格構造の定量的評価法であるアーチ高率は,X線計測と相関が高いとされているが,扁平足の基 準は明確でない。また,足底圧痕の形(footprint)による定性的評価法には野田式分類法があるが, その他にも研究者により用いられるパラメータは異なり,決定的な定量化が行われていない。そこで, X線計測に代わるこれらの評価指標をできるだけ定量化し,より運動能力と関係の高いパラメータを 用いて汎用性の高い評価方法を検討することが望ましい。本研究において得られた子どものアーチ形 成の程度を,標準値として利用できれば,臨床上有益なものになりうると考えられる。