リラックス動作法による被災者の心のケア
バイオフィードバック研究 1996 23巻 p40-45
冨永良喜
要約
4カ所の避難所で 「リラックス動作法」の名称で 95年3月初から7月中旬まで、被災者の心のケアを実践した。いつも5名から10名の被災者が訪れ、147名の人に動作法を行っ た。私たちは被災体験については尋ねず、ひたすら心地よい体験ができるように関わった。本論文では印象に残った6名の事例を述べ 、災害での心のケアのあり方を提書することを目的とする。私たちの実践から、「心のケア」という看板より「身体の凝りの癒し」などといった身体の問題から入ることの利点、からだは心を描いていたこと、援助論としての心のアセスメントの提案が重要であることが示唆された。 動作法
肩の開き
体幹のひねり
被災者の状況
肩こりは、全体の85%に達している。 また、不眠が43%と高く、からだの凝りと睡眠障害につ いての訴えが最も多い。 からだは語る・からだに語る
「身体を窓口にして、心と関わる」という方法を述べてきたが、むしろ、「からだの感じは心の動きそのもの」といった方が適切であろう。今抱えている問題をからだは語っていたし、からだの感じは日常生活の生き方そのものであった。心を形にする方法が心理学の歴史であり、描画法や質問紙法 などが考案されてきたが、からだほど心を描いているものはないと実感した。被災直後には、 全体が じわ一と硬 く、しかも数試行の援助で、楽に肩を動かせるようになる人が多くいた。これまで肩こりを感じたことがなかっ た人が凝りを訴えた(河野、1995) 。 からだに語りかける時、私たちはからだをほぐしたり柔らかくすることを目的としない点で他の身体療法と異なる。からだに自分がどう向き合い、自分がからだを動かす感じ、動かせない感じに注目する。動作努力感である。からだを硬く動かせなくても、からだからの心地よい感じを感じられればいいし、逆にからだが柔らかくても心地よい感じや自分に向かっている感じが浮かばないと駄目である。