MRの効率的な営業活動をAIが支えます
田辺三菱製薬は、医療情報担当者(MR)の営業支援に人工知能(AI)を活用しようとしている。現在システムを構築中で、2018年度中にも導入する計画だ。竹田 大作営業本部マーケティング部デジタルマーケティンググループマネージャーはAIの活用について、「MRが判断するところを、AIが助けるもの」と説明する。現在、デジタルマーケティンググループの計7人が、MRの営業支援システムの開発に当たっている。 田辺三菱製薬は17年からMRの営業を支援するため、AIやデジタル技術を活用した取り組みを模索してきた。竹田マネージャーは、「マーケティングが現場で解決しないことが多い。そのためAIの必要性を会社で議論してきた」と明かす。
まず17年4月に、MRが医師にメールで論文や関心があるコンテンツなどを自動的に添付するシステムを導入した。医師のニーズにあった情報交換が可能になり、医師との面談など接点が増えることを狙いとした。「何よりも、医師との信頼感が醸成できる」(竹田マネージャー)と手応えを感じている。
18年度は次のステージに移行する時期に位置づけている。最適で効率よい営業情報を導き出すため、MRが営業情報を都度更新して形成したビッグデータ(大量データ)をAIで解析するシステムを構築中だ。訪問履歴のほか情報提供のメールを医師が読んだ時刻や医師からの問い合わせ内容などを蓄積して解析。MRの効率的な活動パターンを導き出していく。
田辺三菱製薬がMRの営業支援で重視しているのが、個別最適化。おのおのの情報を精度の高いものに結びつけ、同社の医薬品の購入につなげていく。竹田マネージャーは、「宣伝一辺倒ではなく、多様な方向でリーチできるようにする」と話す。
このシステムを活用すると医師にどういう形で情報提供すればよいのかなどを、手元の情報端末で見て面談計画を立てるといった仕事も生まれてくる。現在、システムの実現のため自社の仕様に合わせた条件を設定し、独自のアルゴリズム(計算式)を構築しているところ。進捗(しんちょく)率は約7割程度だ。営業の現場に投入され、大いに活用される日も近い。
同社はMRの営業支援と並行し、17年から日立製作所と共同でAIを活用した医学情報の検索や収集の自動化にも取り組んでいる。日立製作所の既存の技術を、田辺三菱製薬向けに応用したもので、MRの営業支援と異なり、数百億円規模に達する巨額の研究開発費の圧縮が狙いだ。
両社の取り組みにより、情報収集の時間が従来と比べて70%減となるなどの効果が出たことが分かった。この結果により、日立は製薬業界向けに汎用化した情報収集AIを18年度中にも提供するという。