H3-MoM_H³ 第26回:地域包括ケアシステム超入門_20191017
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written by ryosukick.icon
2019年10月17日(木)19:00-21:00 @ 日本橋
【講師】
E899
【当日資料】
【概要】
自己紹介
お上(厚生労働省)からお下(うんコレ)まで対応している
臨床、経営、政策の3つのレイヤーから医療は成り立っている。相互に関係しあっている。
「厚労省は医療の現場がわかっていない」と言われるが、厚労省には厚労省の現場がある。
デジタルヘルス/コミュニケーションデザインに結果的に関わるようになった
基礎知識
利害関係が対立するステークホルダー
患者
医師
病院
保険者
メーカー
行政
自由競争による市場原理が働いていない規制産業。そのなかで最低でも抑えておくべきは保険診療と地域包括ケア
法律・政策を理解するポイント
頑張って読まなければならない。。。?最終的にはYes。ただ、大まかに理解できることが大事
実際には「介護」や「医療」などの定義がたくさん書いてある辞書的な要素もある
規制の強さは、憲法>>>>>>>>法律>政令>省令>>>通達>通知
分かりやすい例が、オンライン診療とかは医政局の局長通知ではじまって、省令で鎮火された。医師法第20条:「自ら診察しないで治療をし」「検案書を交付してはならない」に対しての解釈。オンライン診療の適切な実施に関する指針がその後出され、診療報酬にも設定されたが、初回対面の原則、3ヶ月以内の通院可ではないと保険診療の枠内には当てはまらなくなり、医師側のインセンティブが十分でなく100件程度しか算定されていない。 基本はIncentive(診療報酬)かRegulation(法規制)でどうアクセス・ブレーキを踏むか。でも、よく言うのが梯子外し。在宅医療は現状点数が高い、ただそれで普及すれば落とすこともある。 クイズ
サイコロの目が偶数なら1,000万円、奇数なら0円
おおよそ500万円
これでどっちを選ぶかというと、多くの人は後者を選ぶ。
産業革命→近代化/工業化→帝国主義→戦争→「これ革命起きね?」byビスマルクから生まれたのが社会保障制度
全員から一定量お金を集め、不幸にも戦争で足を失ったとしても負担金を国が出す
誰に不幸が落ちるかわからないなら、みんなでお金を出そう。これが共助の始まり
実際、ビスマルク時代のドイツでは国家安全保障費(警察費なども含む)が高くなっていた。それくらいなら社会保障にしたほうが良いという議論になり、コスパがあるという判断になった。
ロシアではソ連崩壊後、死亡者が増えた。社会混乱による医療で、透析治療ができなくなった患者が切り捨てられた。
日本の医療の特徴
国民全員が社会保障費を払い、その代わり日本国内であればどこでも同じ医療を受ける権利を保障されている
患者(被保険者)が日々払った保険料から、医療にかかった際の費用の7~9割を保険者が医療機関へ払う
一定の質と金額を担保することが厚生労働省のミッション
基本料:一定の質で一定の金額を満たすサービスを提供した場合の報酬
加算:一定の質以上のサービスを提供した場合の報酬
介護保険は40歳以上から全員徴収、但しフリーアクセスではなく要介護認定という「免許証」をもらい、介護保険を使っていい金額の上限が決まる。医療と違って、上限以上使う時には自費負担による混合介護も可能。
社会保障制度の変遷
昭和20年代の課題:戦後の緊急養護と基盤整備(救貧)
昭和30-40年の課題:国民皆保険と社会保障制度の発展(防貧)
1960年代に5.7%だった高齢化率は、今では20%を突破。昔は「こんなに長生きしてくれたのであれば医療費無料にしましょう」であったが、そうも言ってられなくなり、2000年に介護保険ができて、自己負担割合も年々増えている。 人口ピラミッドは1人の高齢者を5.1人で支えてたところから、いまは1.2人で一人と「ピラミッド型」から「肩車型」になり、さらに大きくかわった。日本の人口動態でピークになるのは2025年。団塊の世代が75歳以上にかかり、爆発的に医療介護ニーズが増える。それ以降も団塊のジュニア世代が死亡するまでは人口構造のゆがみはかわらず、2060年までは超高齢化社会が始まる。
地域差をもった医療介護需要
地域によって高齢化のフェイズが違うので、医療介護需要のピークが異なる。高知県は既に人口減少フェイズ。毎年神戸市1個ずつ減っていくくらいのインパクトが2020年以降には起こってきてしまう。
ドラッカー「人口構造の変化が実りあるイノベーションの機会となるのは、既存の企業や社会的機関の多くが、それを無視するからである。人口構造の変化は起こらないもの、あるいは急速には起こらないものとの仮定にしがみついているからである」
Work:地域差がある課題を解決できるのか。あなたが首相ならどう切り抜けますか?
例)
一定のお金を用意して、地域に任せる
労働者を海外から引き入れる
当事者として考えると、政策の話は面白くなる
地域に適した医療介護提供体制を、公助・共助・互助・自助を組み合わせながら実現する政策群
共助:みんなで守る(医療保険、介護保険、社会保険) 元々日本は公助・共助が極めて強かった。いまは自助・互助も交えながらヘルスケアシステムを作ろうとしている
医療から介護まで一貫した提供体制を
地域に根ざし、まちづくりまで視野に入れる
データに基づくシステム制御
改革推進手法としての報酬/財政支援
医療のあり方
都道府県の役割強化
地域包括ケアシステムのコンセプト
患者/家族の生活を中心にして、医療・介護・住まいのサービスを統合していく
「曼荼羅」のような図が出る
2025年のあるべき病床数の推計結果
https://gyazo.com/acd4205b057a92ec81ab7cdb8dc50b23
一般病床と療養病床しかなかったところから、高度急性期・急性期・回復期・慢性期へ再区分した
急性期~回復期~慢性期は病院に運ばれてから、回復し、自宅へ返っていく過程にそって設計されている
ざっくり例えると、印象だけでお店を選ぶコンシューマーがいると、寿司屋に肉じゃが食べたい人が並んでる。地元の定食屋では肉じゃがが出ない。総合病院ではなく機能分化し、寿司屋と定食屋で連携すればいいじゃないか、地域医療構想のそもそもの起こり。 昔は大病院だったら何でもできた。が、大病院ではない中小病院にも手術の症例が分散している状態で、手術できる病院は地域のなかで限られた病院だけ、それ以外は回復期とかやりましょう、という議論をデータドリブンに始めればいいんじゃないですか、というのが地域医療構想。入院医療のニーズはマクロ的には減っていくので、それに対応する提供体制の再構築を進めるのが地域医療構想。
疾病によっても異なる。例えば、大腸がんは1ヶ月くらい待っても症状はあまり変わらない(待機性の疾患)なので大病院で、一方で脳梗塞や心筋梗塞は患者数も多いし即時対応が求められるので地域に機能を残そうという
人工が1,000人いたら、どれだけの人が医療を必要とするか。
https://gyazo.com/d9330b7a1a718a0b86a9399567d4eaae
結論、本当の意味での大学病院レベルの医療は量的にあまり必要ない。
医療を受ける3つの場所
外来:普通の人がイメージする「病院に行く」
入院:普通の人がイメージする「入院する」
在宅:自宅に医師が行く
施設:介護施設も含まれる
居宅:自宅で受ける
制度・政策は社会の変化に適合していく
現状は社会の変化にまだ政策が追いつききっていないタイミング
2年に1回の診療報酬改定、3年に1回の介護報酬改定、6年に1回の医療法改正が起こる
6年に一度、これらがシンクロするタイミングを作ろうとしている
医療経営のプロとは
制度のせいにするのは4流、制度に対応するのは3流、将来を読むのはプロフェッショナル、将来を先取りするのは先導者
社会の問題さえわかっていれば、制度・政策はかならず追いついてくる
地域包括ケアシステムをサッカーに例えると
4-1-5(DF-MF-FW)という極めて歪なフォーメーション。自称FWの急性期、オーバーラップしないDFな慢性期・介護
Work2:日本のシステムの活路はどこに?
臨床現場からみた地域包括ケアシステム
公的病院の外科医時代
手術室に来る人が患者
在宅医時代
自宅にいったら分かる、医療の鍵。
人生観を変えた言葉
医療にはBiomedical(分子生物学)的アプローチとPsychosocial(社会心理学的)アプローチがある
ただ、医学部では後者は教えない
誤嚥性肺炎とは書くけど、一人暮らし、生活保護といった環境はみていない
患者ではなく疾患を診ていた時代が自分にもあった
これまで病院で亡くなっていた患者さんが、自宅でなくなる社会に
一過性で増える需要のためだけに、看取り病院はつくれない。
地域包括ケアモデルの今後
今後、ほんとうに大事なのは互助
日本では精神病で暴れている人を拘束しているが、イタリアには精神病院はない(変な人がいるのは当たり前)。
認知症は病気ではないかもしれない。定義の問題でしかない。寛容な社会づくりが大事
所得階層別の疾患相対リスク(Social Determinant of Health)は極めて大きい
うつと所得の相関も高い
要介護認定と経済水準の相関も高い
主観的健康感があるかどうかは、相談できる友達がいるかどうか次第で左右される
ワクチンを摂取するかどうかで、相談者が居たほうが接種率が高い
WHOが提唱しているモデル。Care Giver、Decision Maker、Manager、Communicator、Community Leader 一人で演るのは難しいから、色んな人と連携しながらやっていけるようになるといい
Work3: 地域コミュニティを醸成させる
【Q&A】
Q. 遠隔診療の広がる突破口はどの辺りにありそうか A. 臨床の質を保てるかが政策側の論点。Skype診察でも質が落ちないか、確認できてからという。
Q. #電子レセプトデータ を用いたデータベース研究をしていますが、レセプトがよみとけません。たとえばこの項目が選ばれたらどの検査をしたとか、麻酔は何分ごとに何点だよとか詳細をよみとくには何を勉強すればよいでしょうか? A. 何を研究したいか次第で異なる。大きい病院がやっている #DPC病院 、小さいクリニックがやっている出来高制でそもそも異なる。DPCでの方だと結構リッチにわかるが、出来高制だと医療行為の積み上げしか一見わからない。一応NDBには両方とも格納されているのだが、研究目的でしか使えなかったりする。ミンチ肉を肉にするだけかも。 Q. 遠隔の診療報酬が半額になった理由はなんなのでしょうか?
A. 上記の診療の質が一つ。あとは田舎の先生が都会の有名な先生に負けちゃう。
Q. DPC病院でも高度なことができるかどうかでかなり地域差があると思うが、厚労省は是正しようとしているのか。結局は県内の医療機関にあまりいい病院がないことに気づいた患者が流出するような
A. 地域医療構想のコンセプトに近い。係数が低い地域は基本的には医療ニーズが減ってきているので、公立病院再編なども含めて病院を合併させていくということをしなければならないとは思っていると推測する。 Q. 地域包括ケアで予防医療的アプローチはあるのでしょうか?病気を未病のうちに治せるとベストだとは思うのですが現状難しいでしょうか。 A. 論点が2つあって、予防医療が医療費を下げるというエビデンスがないことと、健康的な生活をするには医療以外の面で結構お金がかかる(例:ラーメンより良いサラダの方が高い)こと。喫煙とかは費用対効果がみえており、タバコの売上よりも喫煙による医療費の方が圧倒的に高いが、ココまで分かりやすいところがなかなかないので、政策的には舵を切りづらいという背景がある。エビデンスが出やすいのは病気の予防ではなく、介護度進行の予防の方がまだ良いが、それでも寿命の最後1-2年に多くの医療費がかかるということは変わらない。
Q.行政、病院以外のステークホルダーの1つである保険者は、今後どのような変化が起こると考えられますか?
A. 今でも多くの変化が起きている。国民健康保険と社会保険でも違うし、共済保険ともまた違う。実際には微妙に医療ルールが違うし、データが断続している。健康保険組合がちゃんと価値を出せるかとか、 高コストなんじゃないかという議論もあり、診療報酬支払の審査もAIがやったほうがいいという議論もある。 Q. 地域包括ケアで複数の法人や施設が連携しなければならなくなると思うのですが、うまく行っている例とうまく行っていない例をざっくり教えて下さい
A. うまく行っている例は済生会熊本病院と付属する施設との連携。地域医療構想のモデルにもなっている有名な事例。うまく行っていないのは東京や大学病院が乱立している地域。大学病院同士で患者の取り合いとかをやりはじめるとうまく統合ができないというケースもある。 Q. よく医師が中心になって地域包括ケアシステムを推進しようとする地域をよく見ますが、コメディカルや市区町村のスタッフは言いなりになってしまい上手くいかないケースをよく見ます。どうすれば上手くいくようになりますか?
A. 難しいですね。。。医師のいうことはよく聞くという文化は患者側も医療側も大きいので大きな課題。ソフト面の話なので、制度だけではなかなか作りきれない。
Q. 医療者を地域に配属する方法はありますか。いきたがらない。
A. そもそも行く必要があるのか、という問いが地域医療構想。ミクロな話は地域単位・病院単位での医師確保ブランディングと働き方改革。僻地医療は別格、自治体の首長のプライドどうするか問題。医師を動かすよりも、患者を動かした方が良い、あるいはかかりつけ医がそのゲートキーパーになり中央病院と連携する