劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト
公開日:2021年6月4日
映画館での鑑賞回数:9回(2023年6月時点)
TVアニメは普通に面白いくらいの印象だったが、劇場版で物語の完結を描き切って傑作というべき作品となった。
なんだかんだで丸く収まった感のあるTVアニメ。それに対して「なあなあで済ませるんじゃない」「大人ぶって諦めてるんじゃない」と正面からNOを突きつけ、一度は決着がついたかに見えた欲望やわだかまりをちゃんと吐き出させるのがこの劇場版だった。
双葉は薫子に「ずるい!」と叫ぶし、まひるはひかりに「大嫌いだった」と言い放ち、ななは純那を主役になれないモブとして見ていたし、クロディーヌは真矢の人間らしい欲望を指摘する。
二次創作で妄想されてきた関係性が公式に示されたような形で、まさに観客が見たかったものという感じがする。
その中で異質だったのが主人公・愛城華恋の描かれ方。
アニメでは大きく挫折することなく、ひかりへの想い一つで猛進し続けていた華恋。
個人的には人間味があまり感じられずキャラとしての魅力を感じていなかったのだが、この劇場版では華恋の半生が明かされ、人間として人格にしっかりとした肉付けがなされた。
特にひかりとの関係性の変化や、舞台に出会ってからの性格の変化はTVアニメ版での行動を感情面でしっかりと裏付けており、非常に満足度の高いものとなった。
またアニメでは決して折れない主人公らしい精神性を発揮していた華恋が、今も昔も悩みながら進路を決めている姿からは、現実を生きる我々観客への応援のメッセージを感じられる。
映像や音楽の質が非常に高いのも評価点で、BDを持ってるのに映画館で何度も鑑賞している理由となっている。
音楽は単に曲がいいというだけではなく、効果音や音声の加工にもこだわりが感じられる。
映画開始冒頭のトマトが潰れる音は音量に驚きつつも、一気に映画を見る気持ちにスイッチが入り、wi(l)d-screen baroqueではスピーカーから出ているかのようなBGMの歪みが臨場感を生み出している。
映像面では有名な舞台や映画をオマージュしたカットや印象的なレイアウトを多用し、目に飽きないスペクタクルを実現している。またカット割りもテンポがよく、何度見ても目まぐるしさを感じる作品となっている。
個人的には西條クロディーヌのいい女感と神楽ひかりのカッコかわいいところが出てたのがうれしいです。
追記
運動や構図に注目して見ていたところ、高所からの落下が再生産のメタファーとして使われていることに気付いた。
既に指摘している先人はいたが、何度見てもこういった発見がある点に作品としての強度を感じる。
これからも新たな発見がありそうで、何度でも違う視点から鑑賞を楽しめるのもこの作品の優れた点だろう。
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