お気楽で小さなアウトラインからはじめる
Go Fujita go.icon
『アウトラインプロセッシングLIFE』に書かれているDOとALLの機能について、GTDとのちがいを意識しながら考えてみます。まずは、ALLの説明部分に書かれている内容の抜粋。
ここに(ALLという項目の下に)、すべてのDOを網羅しようなどと気負わず気楽に書きます。
ここを(最初のお気楽な?仮分類したDOのアウトライン)起点に〈シェイク〉しながらアウトラインを育てていくのです。
果たして「福岡出張」(DOのひとつとして書かれた項目)は独立したプロジェクトでしょうか。そもそも何のための出張なのか考えてみると、「福岡X調査」という仕事の一環として、ある企業を訪問するためなのでした。
(ひとつ上の)「仕事」の階層まで戻り、「福岡出張」の上位階層として「福岡X調査」という項目を作ります(レベルアップです)。
このアウトラインを眺めているだけで、「福岡X調査」について他にやるべきことがないか考えさせられます。
「福岡X調査」にZoomし(その項目の下位階層だけ表示すること)、「福岡出張」以外に思いつくDOを書き出します(ブレイクダウン)。新しいDOが2つできました。
とりあえずここまでにして、もう一度「仕事」の階層まで戻ります。「仕事」のDOが2つしか書かれていないので、他にも「仕事」がないか考えます(ブレイクダウン)。新しいDOが4つ出てきました。
このあと「仕事」の下のDOについてもブレイクダウンとレベルアップをつづける、つまりシェイクしながら、ALLというアウトラインを育てる説明が続きます。
さらにそのあと、「プライベート」のランダムに見えるDOをシェイクする方法の説明が続くのですが、これがまたすばらしい。でも、ここでは割愛。
*
タスクリストを、仮の出発点からシェイクすることで、たとえば「仕事」という名前で漠然と捉えていた項目に関係する新しいタスクを見つけながら、プロジェクトの役割がクリアになるプロセスが、明快に説明されています。Tak.さんの生活のリアルを交えながら。
ポイントは、出発点がお気楽で小さなアウトラインであることでしょうか。例として上げられているDOの数は7つ。それを「仕事」と「プライベート」のふたつにグループに分けたアウトラインから始める。「仕事」や「プライベート」という区分も、あくまで仮のものでかまわない。
それをシェイクすることで、自分のLIFEにとって役割がクリアになった項目をもち、かつある程度網羅的なタスクからなるアウトラインができるのです。
*
ぼくが、David AllenのGTDを知ったのは、10年前でした。読み終えるとすぐに実践したくなり、意気揚々と近くのスターバックスに行き、2時間半かけて自分が抱えているto doを書き出しながら、とにかく構造化させたことを覚えています。アプリケーションには、OmniFocus(Mac OS版、iOS版)を選びました。
To doをすべて書き出すのには、かかる時間以上に、気持ちとしてしんどいものがありました。最初からブレイクダウンした、細かいタスクのリストアップを意識したせいもあると思いますが、とても大きなリストになった記憶があります。そして、こんなにたくさんの作業を、自分はうまくオーガナイズしながらこなすことができるんだろうかと、ブルーになりそうな気持ちに抗いながら作業したように覚えています。
加えて、その大きなto doリストを構造化する作業も、かんたんではありませんでした。大きなリストから、いきなり自分の納得できる階層構造をつくることの難しさは、それ以前にも何度も経験していました。とりあえずは、ありきたりの構造、つまり自分にとってリアルではない部分が多くなっても仕方ないと、割り切って作業しました。
結果として、自分の抱えている作業を可視化し、ある程度整理して頭を整理できたこと、まずは何に取り組めばいいのかが見えてきたことに、大きな達成感はありました。そして、実際にそれ以前とくらべて、ある程度仕事を進めやすくなった手応えもありました。でもそれと同時に、自分にとって説得力の小さな、ガタイだけ大きなアウトラインになったような感覚が、少なからずありました。
OmniFocusにつくったタスク管理のアウトラインは、まだ自分の生活から遊離したもの。だから、それを、できるだけ自分の日々の生活から出発したものに育てる。これが、当時のぼくにとっての大切な課題になりました。
余談ですが、その試行錯誤の中で、苦し紛れに始めたのが、フリーライティングでした。当時はそういう名前があることも知りませんでした。Tak.さんのアウトライナー記事に出会い、そこに紹介されていたフリーライティングという言葉に出会うのは、たしか、もう少しあとのこと。
ぼくにとってフリーライティングは、頭の中で混沌としていたり、その混沌さが理由で無視されがちな、自分の声を聞く手段として、はじまりました。
*
さて、この『..LIFE』で紹介されているタスクリストのシェイクは、たぶん人間共通の弱点である、(1) 網羅的なリストをつくるのが苦手(記憶はそんな風に呼び出せない)、(2) 大量のリストから自分に意味のある構造を見つけるのも苦手(総当たりで組み合わせを考えるなんて無理)を踏まえ、その解決策を具体的に示したものです。
そして、何よりも重要なのは、自分がお気楽に書き出したDOをベースに、自分でさえ(自分だからこそ)気づいてなかった、自分のLIFEの全体像をはっきりさせるという、ボトムアップ的なアプローチでもある点も、自分の生活に根ざしたタスク管理を進める上で忘れてはいけない、大切な機能だと考えています。
では、フリーライティングは、そこに何を与えてくれるのでしょうか。
(May 13, 2020)