Stylized CGI
https://www.youtube.com/watch?v=l96IgQmXmhM
誤用や粗さというものをビジュアルスタイルに取り入れるDavid O’Reillyの姿勢は、多くのアニメーション作家に影響を与えてきました。James Molleの『BLACK SHEEP BOY』とかはそうですよね。日本でも大橋史さんやでんすけ28号さんが影響を公言されてました。最近になってようやく、メジャーな映画でもいわゆるDisneyやPixarのような見た目を目指さない、独自のアートスタイルをもった作品が登場するようになりました。『スパイダーバース』(2018-)や『ミュータント・タートルズ: ミュータント・パニック!』(2023)は僕のお気に入りの映画ですが、こうしたルックは「Stylized CGI」などと呼ばれていたりします。David O’Reillyの方が10年早いですけどね。
伝えたいのは、描画技術の痕跡を限りなく消し込んでハイファイな滑らかさを目指さずとも、筆致それ自体を面白がる態度があっても良いということです。アルファブレンディングが無くとも、油画のストロークや3Dのポリゴンが見えちゃっても、網点や版ズレがあっても、あるいはジャギってたっていい。その内側にある種の美的調和さえあれば、それはリアリティたり得る。そしてそれは無数の公理系、マルチヴァース、そして世界の「ヴァージョン」を生み出していく。僕らがDavid O'ReillyやCGIの荒野から学べるのは、こうした多元的な制作観です。そうした視座から今までのCGやアニメーション表現というものを振り返ると、物理ベースレンダリングや12のアニメーション原則が目指すリアルさやリッチさは、数多ある正解の一つに過ぎないと相対化できるように思えてきます。