Lisp入門
リストと前置記法
Glisp で使われる言語は Clojure という Lisp 方言をベースにしています。Lisp は LISt Processor の略で、その名の通り、すべての構文はリストからなります。リストは以下のように、丸括弧 () の中にスペースを挟んで表現します。カンマ , は要りません。 code:clj
(max 1 2 3 4) ;; -> 4
上記の max は、最大値を返す関数です。Lisp のリストは普通、関数呼び出しを表します。 (<関数名> <引数1> <引数2>) のようにリストの最初の要素が関数名、その後に続く要素がその関数への引数として解釈されます。これを前置記法といいます。例えば
code:clj
1 + 2
のように、2 つの値の間に挟む形で使われる加算記号 + も、Lisp では + という名前の一介の関数でしかありません。そして、関数名は常にリストの最初に来るので、
code:clj
(+ 1 2)
となります。普通の関数呼び出しも同様です。JavaScript でいう Math.sqrt(4) は (sqrt 4) となります。Lisp の気味悪さはだいたいこの前置記法のせいですが、このシンプルさがもたらす良いこともたくさんあります。これは Lisp に慣れるうちにだんだんと分かってきます。
すべてのリストが値を返す
このように、基本的な四則演算子をはじめ、> のような比較演算子、変数の宣言から if のような条件分岐文まで、すべてが関数呼び出しの形で表現され、それらは評価されることで何らかの値を返します。以下は JavaScript との比較と、そのリストが返す値です。
code:clj
; 変数の宣言(右辺を返す)
; let x = 10
(def x 10) ; -> 10
; コンソールにログを表示(文全体としては nil を返す)
; console.log("Hello World")
(println "Hello World") ; -> nil
; 比較演算子(真偽値を返す)
; x === 10
(= x 10) ; -> false
; if文(三項演算子のように、if文全体としても1つの値を返す)
; (x > 5) ? "A" : "B"
(if (> x 5) "A" "B") ; -> "A"
; λ式(関数オブジェクトを返す)
; x => x * 2
(fn x (* x 2)) ; -> (fn x (x * 2)) リテラル
nil は JavaScript でいう null です。Glisp では以下のようなリテラルを扱うことができます。
code:clj
-3.14159 ; 数字
"Hello" ; 文字列
x max ; シンボル(変数名・関数名)
:keyword ; キーワード(マップのキーなどで使う)
true false ; 真偽値
nil ; null
; ベクタ(関数呼び出しとは解釈されない、ただの配列データ)
; マップ
{:name "Taro" :age 20}
ちなみに ;でコメントアウトできます。
評価
リストは入れ子にすることができます。その場合、内側かつ最初のリストから順に評価されます。そのリストが関数呼び出しをした結果の値に次々と置き換わっていくイメージです。以下は、式全体が評価されていく様子です。(Ctrl+Eでカーソルがある部分の式が評価されます)
ベクタ
カッコ () で囲まれたリストは常に関数呼び出しとして評価されるので、 1 つめの要素が関数ではなかった場合はエラーとなります。
code:clj
(0 1 2) ; 0 は関数ではないのでエラー
そこで、データとしてのリストを表すにはベクタを使います。ベクタは角括弧 [] で囲われた Glisp では座標やパスデータを表すのに使われます。
code:clj
Clojure との違い
Glisp で使われる Lisp は Clojure をベースにした簡易的なものです。実装されていないコアライブラリもあります。文法としては、例えば以下のような違いがあります。
マップは キーワードか文字列、シンボルしかキーに持つことができない
code:clj
{10 "ten"} ;; だめ
マップの分割代入の表記順が逆
code:clj
;; Clojureでは
;; Glispでは
その他 :as :keys などを使った分割代入はできない
名前空間の非サポート(/ 区切りの関数名として簡易的に表記しています)