ラッセルのパラドックス
「それ自身を要素として含まない集合」からなる集合Rを考える
Rが「それ自身を要素として含む」なら、Rはそれ自身を要素として含んではならない
Rが「それ自身を要素として含まない」なら、Rはそれ自身を要素として含んでなくてはならない
よって矛盾
集合は事物とは違った存在の仕方をしており、世界を構成する存在者ではなく、論理的虚構にすぎず、そこには階型の違いがある。よって「集合がそれ自身の要素であるかどうかの問いの全体」が、「真でも偽でもなく」むしろ「無意味」「意味のない雑音」であった。集合とは、後の「記述の理論」があきらかにする意味で不完全記号である。「集合」「数」の指示するものが「スコラ的プラトン的な意味」で「無時間的に存在」すると考えてはならないとラッセルは気付いた。事物の存在の次元と集合の語られる次元とは混同されてはならず、或る階型の対象に真偽を言えても、異階型の対象には有意味には言えない。我々は何らかの性質を有意味には命題一般には帰属させ得ず、ただ特定の次元の命題に有意味に帰属させうるのみである(ラッセルの階型理論)。