過去と未来の視点を往復させる国民共通の時間意識が「現代」である
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過去と未来の視点を往復させる国民共通の時間意識が「現代」である
かつてベネデット・クローチェ(というイタリアの自由主義を尊ぶ社会主義者)は、「すべての歴史は現代史である」といった。コンテムポラリー(現代)とは、「時間において同じ帯に属している」者たちが、「未だ来たらざる時間」を見通すために「過ぎ去った時間」を振り返る、という視線の往復運動を国民の協同で行うところに成り立つ時間意識のことであり、その意識にもとづく国民に共同の物語のことだ。つまり、過去志向にもとづいて何らかの英知が蓄えられればこそ、未来志向における目的や手段が判然としてくる。また未来志向において目的や手段を分明にする必要があればこそ過去志向において拠るべき英知の何たるかも分明になってくる。(p37)