ポピュリズム
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フランシス・フクヤマ「ポピュリストは民衆に対し現状維持を約束します。彼らの重要な関心事や、地位や承認を得るための闘争について、ほとんど心配させないようにします。私に言わせると、こうしたポピュリズムは、私たちが「歴史の終わり」を生きていることの補足的な説明なのです。と、いうのも、ポピュリズムは、ナショナリズムやファシズムといった過去に存在した思想を、控え目な形でリサイクルしているからです。 だが、このバイデンの台頭もまた、ポピュリズムへの対応という点で、歴史の反復のようである。20世紀初頭にあったポピュリズム旋風は、その過程で明らかになった数々の社会問題に対処できるよう「大きな政府」、すなわち福祉国家の誕生をもたらした。100年前にも、ポピュリズム旋風が吹き荒れた後、人びとの怒りや不満から発せられた真摯な直訴に対して、その新たな現状認識に合わせて政治改革が断行された。トランプによるポピュリズムの嵐があったからこそ、それを宥める対抗馬が求められた。2021年3月にコロナ救済策として、1兆9000億ドルもの財政出動を実現させたことすら、世界恐慌に対処したニューディール政策の歴史が繰り返されているように見えてしまう。ランシマンが言う通り、世界をつくるのは、理論ではなく、歴史なのである。