「近代日本はどこで間違ったのか?」第2部講義メモ
01:34:58 第2部開始
01:37:02 引き返せた地点はない?
日中戦争と太平洋戦争は一体的
決して日米間の戦争だけではなかったと(植田)
戦後は太平洋ばかり見ていた
太平洋戦線は残虐行為があまりない
作戦の話に集中して議論できた
中国、フィリピン、ベトナム、インドネシアなどアジアではものすごい数の人が死んでいる。アジアの視点が必要だということで「アジア・太平洋戦争」「大東亜太平洋戦争」「東亜戦争」などと呼ぶようになる
読売新聞が「昭和戦争」という言い方を定義して全く定着しなかったことも
日中戦争は止められたはずだが…
軍の暴走の問題
武藤章「自分たちは石原参謀が満州事変で行われたことをお手本にしているだけです」
しかし、満州事変は石原莞爾や関東軍の暴走ではなく若手が暴走して起きた
石原莞爾は天才的な人物だが、彼を排除しても止まったわけではない
永田鉄山
統帥派(総力戦に耐えられるように日本の国家を改造する立場 エリート集団)のボス
行動派の将校に局長室で切り殺される
天才肌で、「生きていれば」と言われがちだが、あまり変わらないだろう(辻田)
第一次大戦以後の「総力戦」準備に遠因があるのでは
01:44:59 研究書
核兵器を知らなかったが「いずれ1発の爆弾で街が吹っ飛ぶような兵器ができるだろう。そうすると戦争ができなくなって永遠平和が訪れる」と書いていた
日満支の資源だけでは自立した経済圏を作れないことを実証的に研究
大東亜共栄圏はイデオロギーだがその裏に資源獲得という実利的な面がある
これは当時から受け入れられた本なんですか?(植田)
当時はあまり受け入れられてない。石原自体が東條英機と揉めてパージされた変人(辻田)
東京裁判で「ペリーを連れてこい」と言った
陸軍の軍人の様々な動きがわかる本
永田に同情的な本
01:49:16 どこまで遡るべきか?
日本は憲法を改正してない(戦後だけでなく、明治憲法も)
総力戦をやるなら国家体制を変えないといけない
明治維新の時代の戦争のパラダイムと変わっているから、パラダイムに応じた憲法を作るべきだったと(植田)
ある種の独裁者が必要(辻田)
東條英機がよく独裁者と言われるが、実際は独裁者になろうとしてる人(辻田)
権力を兼任しないと日本の国家が回らない
不磨の大典
明治天皇が定めた憲法を尊重するあまり、改正できなくなった
結構今の状態に似ている(辻田)
大日本帝国憲法は権力を分散しているが、実際は元勲たちの人間関係で回していた。元勲たちが死ぬと国家機構が麻痺する
改正案は「不敬だ」と言って潰される。政敵がそれを利用する
日本のもともと持っていた構造とポピュリズムが融合した結果、明治国家の構造が柔軟性を失っていって戦争を止められなくなっていた(辻田)
官僚同士の駆け引きによって物事が決まっていく。普段はそれでいいが、危機が来た時に決断できない
ポピュリズムが止められなくなる
現代の価値観の投射
四カ国条約(→日英同盟破棄)
当時最強の英国についていくべきだったという論(現在の日米同盟の投射)
桂・ハリマン協定の破棄
日米対立を回避できたのでは
桂・ハリマン協定が有効になっていてアメリカと日本で中国に手を出すと、向こう側の英仏と日米が戦うという世界があった?(植田)
すごい仮想戦記ですね。その戦いは結構アツいな…(辻田)
そもそも「鎖国」するべきではなかった?
アジアにがんがん進出するとか
山田長政とかいたわけだし
日本は当時結構な軍事国家
それは妄想の世界ですけどね(辻田)
うまくいったとも思えないですし(植田)
02:01:56 研究書その2
民衆に理解がないゆえに冷静なことが言えた
ただ大隈とかもただポピュリズムに乗っかっただけではなくて、上の世代に対抗するために民衆側につかないといけなかったのかなと…(植田)
やはり大隈派ですか(辻田)
母校愛がありまして…(植田)
02:03:54 iincho「そうだ、これは早慶代理戦争…だった!!(違」 辻田さんとしては有力説はあるんですか?(植田)
やっぱり日中戦争をどうにかするというのが一番わかりやすい(辻田)
2年ほど待っていれば第二次世界大戦が始まるので、そこで輸出で稼げば国内のことを収められた
当時の日本は経済的に逼迫していたので大陸に行かなければならなかった
ただ国家の構造の矛盾はそのままなので何かで暴発していたと思う
02:04:29 構造的な問題
英米と仲良くしておけばよかった論
明治国家の仕組みに問題があった論
司馬史観のように明治の日本はよかったという話があるが、明治の日本は属人的
明治国家の存続は山県有朋を改造して寿命を100年くらいに伸ばさないと難しかった(辻田)
ポピュリズムに問題があった論
近代社会が発達すると民衆が力を持つのはやむを得ない
顕教・密教問題
一般の人たちは天皇は神聖で崇めなければいけないと思っている(顕教)
エリートは国家を統治するための方便だと思っている(密教)
ポピュリズムが台頭すると、エリートが天皇を蔑ろにしていると排除する
02:10:55 無理やり「正しかった日本」を構想
列強維持ルート
日中戦争を回避、戦争特需で経済成長、戦後核武装国家に
軍部の暴走、植民地独立戦争、革命
構造改革ルート
そんなことが可能なのか
天皇をどうするのか
02:16:42 s_kahun「元勲は皇室を裏金用の予算と使っていたのか。妖怪か神か何かやね」 米英と仲良しルート
日英同盟維持、米国と満州開発
国内の反発を抑えられるのか
02:19:25 まとめ
正しさは変わる
今の政治的に正しい価値観は、軍事力でマウントしていたヨーロッパ人がルールを変えて価値観でマウントしているもの(辻田)
しかしそれが自分たちに跳ね返っている
今後大航海時代の位置づけが変わってくる時に日本の位置づけも変わる
世界史の中で日本を考える
近代日本の歩みはやはり 65点(辻田)
明治維新は欧米列強に反撃した立派な振る舞いだが、その過程でアジアの国々に侵略したのも事実
負の側面を描きつつ日本を肯定したい
今日本が保守化しているのでこういう話ができる
辻田さんがこれまで見てきた各国の歴史博物館は何点になるでしょうか?(植田)
フィリピンのような侵略された側の博物館は悪があまりなくすっきりしている(辻田)
犠牲者意識ナショナリズム
日本は被害者でもあり加害者でもあるので、参考になる国があまりない
アメリカで面白かったのは、国家「星条旗」で歌われる星条旗の現物が国立歴史博物館の中心に国宝として飾られているが、最近の研究で、その旗を織った女性たちの中にアフリカ系アメリカ人がいたことがわかったと(辻田)
なるほど…それはポリコレ的な(植田)
アメリカっぽいでしょ?(辻田)
ナショナリズムとは「我々」を作る運動。アフリカ系アメリカ人はこれまで「彼ら」だった。それを我々の中に入れるのが国民の物語。「星条旗」を作ったフランシス・スコット・キーは奴隷制肯定しておりキャンセルの動きもあるが、それを「星条旗はアフリカ系アメリカ人も共同して作った』と上書きしている。これは新資料が見つかっているから歴史修正主義ではなく、政治的にも正しく、かつナショナリズムでもある。これは今の時代のモデルケース(辻田)
02:26:48 1974「フランスは?(ヴィシー政権)」 コラボ問題ですね(辻田)
今の我々の国をどうするのかを考えるためには、近代史の話は絶対に必要になる(辻田)
近代史に血をめぐらせるために、「こうやったらうまくいったかもしれない」と思考実験をするというのが大事
02:33:36 質疑応答
02:33:48 質問者A:明治国家の軍人は名を挙げることに駆動されていたように感じるが、この頃の軍人でもっとも出世したのは誰か。
軍人といった時に兵隊とオフィサー(将校)を分ける必要がある(辻田)
兵隊の場合は一般には戦死した時英雄になる
オフィサー側でいうと東郷平八郎とか
シビリアンコントロールの話もあったが、シビリアンコントロールという概念自体が戦後アメリカから入ってきた。当時意味がわからなかったらしい(辻田)
朝鮮戦争のさなかにマッカーサーがクビになった時日本人が衝撃を受けた。日本人にとってはマッカーサーは独裁者のようだが、トルーマンと揉めたら一瞬でクビになる。これがシビリアンコントロールかと
陸軍将校にはどういう人がなるのかという研究
国のためと言うが、裏では出世したい欲がある。特に地方出身
一高・陸士・海兵
軍人や自衛官にとって最低限のリスペクトを社会が持つことは重要。それがないと問題が起きる(辻田)
02:41:51 質問者B:日本の場合国のアイデンティティはどのくらい遡るのか。やはり2681年くらい遡らないのかと…
神武天皇うんぬんというのは明治国家が革命政府だから。抜本的に国のかたちを変えているので、権威が必要だった(辻田)
「これは伝統。我々は本当の日本を取り戻した」と言ったほうが人がついてくる。そういう時に出てきたのが維新であり神武だった
明治天皇と神武天皇を重ねている
中世をキャンセルするために古代と近代をつなぐ
実態は近代でそれを古代で装飾するというのが近代国家のアイデンティティというところがあり、どこの国もやっている
網野史観なんかもアイデンティティですかね?(植田)
網野善彦の歴史観は能登の研究から始まった海民論。北前船に注目して日本は海洋国家で豊かな海民の伝統があり、だし文化など現代にも繋がっている。
02:47:55 riwakom「網野善彦は天皇とは何か という問題に全力で取り組んだ そういう圧力がなければなし得なかったでしょうね」 歴史はいろんなところに連携している。日本のアイデンティティはここだと言うべきではなく、残っている莫大な資料や歴史から引き出せると考えるべき(辻田)
質問者:国立歴史民俗博物館に行っても巨大すぎていつも真ん中くらいで時間がなくなって近現代にたどり着かないんですが… 日本は歴史が豊かすぎて近現代がぼんやりしているという問題がある。近現代史を切り離して別に作るべき(辻田)
佐倉は遠すぎるのでもうちょっと東京の都心に作ってほしい。今だと遊就館になってしまう 今の東京のどこに作るといいですか?(植田)
北の丸公園のどこかでしょう。あそこしかない(辻田)
アイデンティティを遡る形以外に広げる形があると思うが、広げる、ネイションを拡張するロジックは日本だとどうなるか。大東和秩序はあるが他はあるか(植田)
拡大と源を探すのは一体。いろんな国民が集まってくると統合の象徴が必要になる(植田)
02:50:59 質問者C:明治憲法をもう少し改正すれば戦争は回避できた、という仮説があれば教えてほしい
問題は、憲法があればみんなそれに従うとは限らないこと。権威がないと従わないから天皇を持ってきた(辻田)
日本は立派なものは変えないで保存しておくというところがある。改正することが当たり前だという思想があれば修正できたかもしれない
空軍問題というのがあって、明治憲法では天皇が陸海軍を統帥するとあり、空軍がなかった。もし日本で空軍を作っていたら絶対憲法を改正する必要があった。そこで必要に応じて改正するものとなっていたらよかったかもしれない(辻田)
質問者:この元勲が動いていたら改正できたという仮説は?
元勲たちは憲法を超越している存在なので、改正する必要性を感じてなかった(辻田)
誰か有力者がいるかと言えば山県有朋かなと思う
今の憲法学者的な解答をすると、もし明治政府に協力な憲法裁判所があって、元勲の無秩序な立法に統制していたら、それをつぶすために改憲があったんじゃないかと(植田)
戦前は議会を通さず法律が作れる勅令があって、天皇の命令という形式だけど実際は政府が作ってたわけで…(辻田)
どちらかというと明治維新が神話を使わずにナショナルアイデンティティを作って置けばどうにか…(植田)
共和制日本ルートですか(辻田)
江戸幕府温存とか…(植田)
幕制日本ルートか…(辻田)
江戸幕府の方が外交的センスは優れていたという話があり、そういう思考実験はありうるなと(植田)
しかし現代風に直せば軍人国家で、かなりやばい世界ではありますね(辻田)
あと地方分権の世界なので、近代国家と相性が悪い
03:01:32 質問者D:日清戦争や日露戦争に勝たなかったパターンはどうなるでしょうか
朝鮮半島をどこが押さえるかという問題。日本としては朝鮮半島を押さえられると目と鼻の先にいるので上陸されるので怖い。それに耐えられるのか(辻田)
植民地を作らない小日本ルートというやつですね。政治的には正しいが…(辻田)
03:05:51 質問者F:植田さんの言っていた江戸幕府まで遡る案は自分もおもしろいと思う。天皇を権威として出してきたことに歴史のターニングポイントがあるんじゃないか。江戸幕府と、庶民の心を安定させるためにお坊さんを使うような案はどうか。
江戸時代に佐藤信淵という人がいて、『宇内混同秘策』という本を書いた。これは幕政日本改革プラン(辻田) 日本は世界の中心だから世界を植民地にするべき
世界を植民地にするためには日本を改革すべき
中央集権国家にする。地域ごとに首都を作って兵力を集中させる
江戸を「東京」に変える(東京の由来とも言われる)
中国を攻め込むには満州からなど、予言的な面も
日本の米はうまいからそれで餌付けすれば…など
「このままの日本ではだめなのでは」という論は江戸時代にもあった
もしあの段階でペリーが来ず、100年200年経っていたら幕政日本が自発的な改革をして中央集権国家になっていたかもしれない
ゆるやかな中央集権を取りつつ、国家神道の代わりに国家仏教をとるとか…(植田)
江戸時代も北海度や樺太には進出していたわけで、徐々に日本の領域が広がり、それを統治するために国内の機構が改革されていき、もしかしたら近代ヨーロッパみたいな国になっていたかも(辻田)
アメリカやフランスみたいな国なんですかね(植田)
03:13:16 質問者G:大正デモクラシーと国際連盟による国際協調主義というのは日本の大きな可能性だったと思う。今日の講義では明治、昭和国家については語られたが、大正日本についてはどのように考えるか。
近衛文麿の話とつながる。パリの講和会議に臨んで、英米の二枚舌、民族差別に確信してしまった(辻田) もし英米が人種差別に向き合い、日本が経済封鎖の恐怖に闇堕ちせず協調路線のまま行くという大正日本ルートというのは今の価値観からすると正しく見えるが、難しい
03:17:31 riwakom「大正デモクラシーと戦間期とは切り離せないから、世界大戦がある世界となかった世界とではまた分岐点があるよね」 日本で普通選挙が導入されて、まともに選挙できたのは数回。一気にポピュリズムに流れてすぐ515事件とかが起こる。民主主義がうまく根づかなかった
今回は日本が主人公で考えてきたが、日本だけで解決できない問題。大正日本ルートで行くには、英米の協力が必要(辻田)
03:20:56 質問者H:辻田さんは近現代史の知識に厚みを持たせることで現代を解像度高く見せようとする仕事をされているが、そんな辻田さんから見て、現在の日本はどのような状況と評価しているか
英米のついていくというルートを選んでいるなとは思いますね(辻田)
日本は脱亜入欧と亜細亜主義を行ったり来たりしている。大東亜戦争のとき八紘一宇と言っているが基本的には英米との協調路線。そっちがうまくいかなくなると急に大東亜共栄圏とか言い出す。それは信用されない
どちらか選ぶというのは構造的に難しい
被害者かつ加害者という自画像を言語化する必要がある
日本のこのどっちともつかない感じというのはこれからの世界において重要な意味がある。中国、インド、ロシアなどはアメリカの世界秩序に対して挑戦するというかつての日本のようになっている
第二の近衛第三の近衛が出てくるような世界において、日本は果たすべき役割がある
持てる国と持たざる国の媒介になるべき
03:25:47 質問者I:植田さんの明治憲法の評価は?
大変難しい問題で、僕はあんまり日本の法制史詳しくないので…(植田)
やたらボリビアやエクアドルなど南米の憲法には詳しいが、日本の憲法の話は全くできず、むしろそのためにこの講義を企画したという
神話的な天皇を中心に据えてしまったという意味ではやはり厳しい…
ただ僕は自然自体に権利を与えるという新しい憲法運動を研究していて、欧米的な秩序に対応するために別の法実序を作ろうとするときに、母なる大地とか、ヒンズー教のように神話的なものを持ち込んでいるなと感じることはある(植田)
日本は国民統合のために神話を持ち出したが、彼らは国際的な対応として神話を持ち出している。今は価値観マウント合戦の時代だから、欧米の出してきている価値観を逆に利用してやろうというゲームになっている(辻田)
欧米もある意味理性という神話を作ってやってきているわけですね(植田)
03:30:15 質問者J:自分の興味のある鉄道を見ていても、イギリスなど近代の精算を迫られると訂正できて現代に対応しているが、日本のように平和だと精算を迫られず訂正できないように思う。近代の精算に直面できなかった国はどうやって流れを訂正できるか、プランがあるか。訂正できる国家、組織、コミュニティとはどんなものか。
日本の場合戦後はアメリカについていくということになってしまったので、訂正しなくても良くなってしまった
イギリスは過去のやばいものの上に立っているという自覚はあるだろうから、表向き綺麗事を言うが、同時に自分たちが秩序の中で地位が落とされないためにどうすればいいかを真剣に考えているはず。それが独立した国ということ(辻田)
どういう国だとそうできるかというと、福澤諭吉が「一身独立して一国独立す」と言っていたが、国家の自立や個人の自立を真剣に考えている人は、常にバックアップを考えながら生きている。それはストレスフルだが、そうでないと自分たちが生き延びられないという危機感の中で生きていて、だから柔軟に変えられる
もし日本に状況に合わせて柔軟に変わっていく国家体制を求めるなら、日本がアメリカの庇護なしで、国際秩序の中で完全に孤立したときにどうするのかを常に考え続けるような国民、政治家がいるような状況にしなければいけない
03:38:56 質問者K:植民地主義に対する反撃が肯定される可能性はどのような文脈に見出されるか。
価値観マウンティングの時代なので、本当に植民地主義に対応していると言うよりは、そのようにルールが変わった。一方には正しいことをやりたいという気持ちもあるが、裏側にはリアリズムもある。新しいゲームの中でどうやって自国の利益を導くのかを考えている(辻田)
その中で日本は一方で侵略国家だったが他方でペリーに開国させられた歴史もあるのだから、この部分を活用していくことをやらなければいけない
たとえば近代歴史博物館を作るならここの部分を強調すべき
03:41:17 質問者L:価値観マウンティングが起きていること自体が今のZ世代的な世論に対応しているのであり、それも世論ポピュリズムの一側面。ポピュリズムについて否定的な話もあったが、ポピュリズムの見方はどう考えたらいいか。
ポピュリズムは民主主義の問題なので、いくら問題があっても権威主義体制に戻すことはありえない。ポピュリズムとどうやって付き合ってだましだましやっていくかということでしかない(辻田)
その意味でSNS社会には否定的。日本は空気に支配されていると山本七平が山本七平『「空気」の研究』で言ったが、SNSで空気が可視化され、世界中が空気に支配されている 都知事選にYoutubeで大変人気のある石丸伸二氏が出馬している。ああいった手法は嫌だと思う一方で、気持ちがわかるところもある。有名にならないと人は話を聞かない(辻田)
問題はいったん有名になったあとで何をするか
権威主義に対抗するためにSNSを利用することを認める。いったん有名になった後の議論はチェックするという2つを見ることでポピュリズムに載せられすぎないようにする
ポピュリズムをあと押しの力としつつノリきらないというのは、日本近代史を見ると本当に失敗しているところですね(植田)
03:45:37 質問者M:明治は明るい歴史で、満州事変くらいから間違ったと伝える司馬史観についてはどう評価するか。またアメリカ独立戦争の物語のように、明治維新を近代における建国神話としてアイデンティティとしてとらえるのはどうか。
司馬史観は近代日本を全否定せず、明治国家を肯定することで昭和を否定するということで、近代日本と我々の価値観を結びつける試み。最新の研究とずれている部分もあるが、否定するものではない(辻田)
日本は近代以前に歴史がいっぱいある。アメリカは歴史が短いのであそこに見出さざるを得ない(辻田)
八紘一宇や神武天皇に頼りすぎなところがある
いろんな国民作家が出てきて、日本の歴史の本質はここじゃないかと議論が起きるような環境の土台作りをしている
03:48:37 質問者N:開国後の日本は長大な大志を持ちえたか、持てなかったのではと考えていたが、今日の議論で日本がグローバルサウスの中で持てる国と持たざる国をつなぐ話がでてきた。これからの話として、日本の大志について聞きたい。
理念というのは半分フェイクでもいい。アメリカも建国の理念とか言っている一方でスーパー差別国家だったわけで(辻田)
これは最近不人気の文明論。川勝平太氏の静岡県知事としての発言は最低だったが、文明論の試みは大事。かといって全肯定はしない 川勝氏によれば江戸時代は軍縮をした世界で稀な国。憲法9条もその軍縮の現れとしてとらえる
持てる国と持たざる国の中間としての日本というのが大志になると思う(辻田)
03:52:55 質問者O:今日の話を聞いて辻田さんが中心となり国立の近現代史博物館をプロデュースするのがいいと思ったが、具体的に動いていく考えはあるか。
ひろゆき的にYESかNOかでお答えください!(植田)
関わりたくない。国とかああいうのはめんどくさいからね…(辻田)
野良で適当なことを言っている人間として生きていきたいと思っている
通史を書くというのは?(植田)
通史は必要だと思うが、個人的には細かい話が好き(辻田)
今の時代通史を書くのは大変。ツッコミを入れたい人が銃口を向けて照準を定めている
実証は大きなものへの反撃として発動するので敵を求めている
近代以降を包括するような本というのは今後やりたいと思っている(辻田)
03:55:38 フィナーレ
もうすでに4時間やっているわけですが…僕たち自身でも考えられる論点がたくさんありました。今日はありがとうございました!(植田)