「近代日本はどこで間違ったのか?」第1部講義メモ
00:03:47 第1部開始
第2期 『1000分で「まちがい」学』もすでに1,000分を超えたという噂もありますが、今回は最終回として近現代史研究者の辻田真佐憲さんをお招きしまして、日本近現代史をさかのぼりながら、間違いや、それをどう訂正しつつ今後の日本を作っていくかについてお聞きしていきます(植田) 昼なんで、どうも違和感を感じるんですが・・・そもそも寝起きだという話もありまして(辻田)
私のやっている近現代史では間違いというのを常に問われる(辻田)
日本の敗戦を間違いじゃないという人はあまりいない
違った切り口でアプローチできないかと思った時に、間違いを逆転させて「間違えなかった日本」「失敗しなかった日本」とは何なんだろうと考えてみたい(辻田)
何を間違いと思うかも時代によって変わる
間違えなかった日本を考えることは我々自身を考えることでもある
昭和の戦争だけでなく、遡って明治や、いやもっと遡れるんじゃないかなんて話もしたい(辻田)
鎖国がなかったらとか・・・(植田)
先日コロンブスのMVが問題になった。みんなポリコレに基づいて批判をしているが、別のアプローチもあると思う。大航海時代以降ヨーロッパ人は世界中を侵略、搾取して行き着いたところが日本。ペリーの黒船で日本は開国させられたが、あれはまさにコロンブスの後継者そのもの。日本人の立場としてはコロンブスと同一視することはありえないわけで、英米のポリコレを引っ張ってこなくても批判できる(辻田) 私の主観として、65点くらいで妥協するしかないでしょと言いたかった(辻田)
日本には東京に国立の歴史博物館がない。国のオフィシャルな歴史観を示しておらず、あいまいになっている。左翼は加害の責任ばかり言うし、右翼はなかったことにする。そうするといつまでたっても作れないので、65点くらいで妥協しましょうと
実際の出来事を羅列するのは主観を廃することなので何点とはいいにくい
日本には脱亜入欧とアジア主義の二面がある。不平等条約を押し付けられたり被害者の側面は絶対あるが、その後植民地を作っていったことについては明らかに加害者。絶対正義とも絶対悪とも言い難い複雑な面がある
00:14:39 なぜ「間違い」なのか?
かつて近代史は日常と地続きだった
8月になると元軍人や戦争経験者のインタビューから「あの戦争は何だったのか」を問うのが当たり前の時代
その後戦中世代が減少し、実証主義が強くなる
戦後マルクス主義が強かったので、マルクス主義の歴史観に対抗するために実証が使われた(辻田)
実証が強くなった結果、日常性を失って歴史から教訓を引き出すこと自体が批判されるようになった
あの戦争への関心を失っているし、いざ興味を持ったとしても何を読めばいいのか(辻田)
高校の教科書とか・・・面白いなと思うのは、僕は早稲田大学の生協で書店員をしていますが、日本史の本で一番ロングセラーなのが佐藤信『詳説日本史研究』(植田) 置いてすらないです(植田)
ざっくりしているかもしれないが、実感のともなった歴史書というものが一般の生活者と細かい研究の間になければ、近現代史というものが血が通ったものとして感じられない(辻田)
自分は戦争経験世代でもないし実感をともなったものは書けないので、その代わりのアプローチとして「間違えなかった日本」を想像してみたい
ある種の追体験として・・・(植田)
思考実験として、ということですね(辻田)
00:23:31 「間違えなかった日本」を考えてみる
Twitter(X)だと「日本はなぜ間違ったのか」というタイトルだけで「間違ってないよ!」と噛みつかれた(辻田)
そういう人は第二次世界大戦の敗北はどう考えているんでしょう?(植田)
大東亜戦争は勝利したことになっている。大東亜戦争の目的はアジアの解放であり、結果的に解放されたから勝利だと(辻田)
500年後から考えたら全然価値観が変わっている可能性がある。植民地主義に対するアジアの反撃の英雄だとか(辻田)
呼称問題
「大東亜戦争」はGHQの指示で使えなくなった
「太平洋戦争」はアジアの視点が足りない
「アジア・太平洋戦争」の中黒をとるか取らないかという議論がある
これが意味しているのは、今後も替わる可能性があるということ(辻田)
新しい説が出てきて変わっていくとそれ自体嫌になる人もいると思う。マウンティングされたら誰だって嫌になる。次々と変わっていく歴史の営み自体を面白いと思ってもらう必要がある(辻田)
先の大戦で勝利したとして、バラ色の未来だったのか?
植民地独立戦争が起きて、むちゃくちゃになる可能性
経済発展できたのか?
戦前の格差の温存
共産革命が起きた可能性もある
アメリカの傘の下には入らなかったけどソ連の傘の下に入るような・・・(植田) そうなったら天皇制もなくなってよりひどい全体主義国家になったかも(辻田)
日本の地理的にはそっちの方が自然な気もします(植田)
第二次戦争を回避しても、別の戦争が起きているかも。あとの戦争の方が兵器の威力が上がるし、悲惨になる
日中戦争の時や、日米開戦の時の外交交渉を担当した総理大臣
27歳にして貴族院議員
「日本および日本人」という雑誌に「英米本位の資本主義を排す」という過激なタイトルの論文を発表
後発の国にとっては不平等を是正しようとすると平和に反してしまうという問題
ウクライナ戦争だとNATO反対論のような立場ですね(植田)
英米がドイツのように経済をブロックしたら日本は戦わざるを得ない
その意味で近衛の言った通りになった
西園寺公望の側近としてパリ講和会議に出席
日本が提示した人種差別撤廃は否定された
どこまで遡るべきなのか問題
大東亜戦争、日中戦争、満州事変・・・
そもそも軍が暴走する国家の構造が問題?
鎖国をやめる?
戦死した山本五十六がパラレルワールドに
クーデターを起こして悲惨な戦争を止める
記憶を持ってワープした人間たちで世界の歴史がむちゃくちゃに
アメリカはフリーメーソンが支配
00:44:31 riwakom「ループものでもあるしDSでもある 全部盛りw」 ドイツはヒトラーが皇帝に就任
日本において仮想戦記、架空戦記という言葉を広めた重要作 東亜100年戦争
欧米列強の侵略によって開国させられた日本の反撃として大東亜戦争を位置づける
「大東亜戦争」という言葉は当時禁忌だった
アメリカがドイツと日本に占領された世界
出された時代が大きい。当時は旧軍人が生きているから「こうすれば勝てた」という話が出てくる
日本が経済的に伸びている時でもあり、「俺たちは潜在的な力はあるんだ、あの時もこうすれば・・・」という話になる(辻田)
国のかたち自体は間違ってなかったのに、テクニカルな部分で負けたんだという発想なんですね(植田)
00:49:55 s_kahun「なるほど、日本の文明は間違ってないことが前提だと」 これもシミュレーションの話
昭和16年の夏に日米の戦いを計算させたら、負けるという結果が出た
当時の軍人も戦えば負けるのはわかっていた
第一次大戦を視察して総力戦の時代が来ることは知っていた
総力戦になれば国力がない日本は負けるという結論になる
その時に自分たちのしていることを理論立てるときに「精神力」ということになる
とにかく戦いまくって相手をビビらせる。それしか勝つ方法がない(辻田)
冷静に考えると負けるけど、なんとかしないといけない結果がそれだと(植田)
負けるという選択肢はなかったんですか?(植田)
「ハル・ノート受託ですか?」(辻田)
今からしたらいろいろ言える。日英同盟を維持しておけばとか。だけどあの当時それができたかということ(辻田)
当時の日本は祖先たちが血を流して独立、自立した国家を作ったことが最大のプライド
撤退するのは英霊に対して申し訳ないという議論になる
00:54:05 iincho「民衆が暴動を起こしたかもしれん。」 ポピュリズムの問題ですね(辻田)
戦前のポピュリズムはかなり直接行動が含まれますよね(植田)
平均年齢が若い。若くてやる気があるやつが多い世界は結構やばい(辻田)
00:57:46 仮想戦記その2
本土決戦三部作:アメリカ本土決戦、ソ連本土決戦、日本本土決戦
リアリズムで悲惨な仮想戦記
日露戦争まで遡った仮想戦記
Hearts of Iron IV
The New Order: Last Days of Europe
第二次世界大戦でドイツが勝利した世界をシミュレーションするMOD
ロシアがバラバラに解体されている
東方総合計画という実際あった計画
ロシア解体論というのは昔からある。昔のはこんなことを言ったらナチだった(辻田)
これは気をつけないといけなくて、「だからナチだ」というのはまずい
それはプーチンのロジックですね(植田)
01:04:35 戦争は回避できたか?
どこが引き返せるところだったのか
1941年12月 大東亜戦争勃発を回避?
すでに石油禁輸されている
昭和天皇が止められたか?
周りに味方がいない 孤独
若くて軍人にナメられている
日中戦争で止められた?
盧溝橋事件
すでに緊張関係があり、これ以外の引き金もあり得た
通州事件
暴支膺懲
プロパガンダ
国民精神総動員運動
海ゆかば
現地の部隊が勝手に南京を攻めた
計画していなかったから略奪が起きた
そのうちに第二次世界大戦勃発→日独伊三国同盟→アメリカ・イギリスと関係が悪くなる
ここで独伊と組まないという選択肢は?(植田)
当時ドイツは破竹の勢いだったから、乗っかってしまった(辻田)
泥沼化
日本はアメリカと戦っているのに石油をアメリカから買っていた。この時点でおかしい(辻田)
満州事件は?
日本は当時調子に乗っていた
「リットン調査団は認識不足」
→国際連盟脱退
戦前の日本で平和主義系のポップカルチャーはなかった?(植田)
まず戦争を悪いと思ってなかった(辻田)
戦争はビジネスチャンス