愛の最終処分場
櫻居 惠.icon
愛って何ゴミかな
指輪の跡さえ残らなかった薬指をなでながら君がいう
燃えないゴミかな
馬蹄をあしらった指輪を未練がましく弄びながら僕は答える
愛が燃えた後の残り滓は今更もう燃えることは無いだろう
ゴミ袋に詰め込まれて最終処分場に捨てられる愛を想像する
海を埋め立て、やがてその上で遊ぶのだろう子供の姿を
捨てられなかった愛の結晶を
たとえ捨てなくても、僕の愛は結晶を結ばないのだけれど
だってあの人はもう愛をゴミ袋に詰め込んでしまったから
明日の朝になったらゴミ捨て場に捨てられる袋に
青いゴミ収集車に詰め込まれて
やがて地面に変わる海を埋め立てるあの人の愛の上で
いつか暮らすことを想像する
馬蹄をあしらった指輪はあの人の指に日焼けの跡を作っただろうか
あなたを愛せたら、指輪の跡が残るくらいの愛になったかな
君が問う
僕は答えない
捨てることさえ出来ない愛の残り滓を持ち続ける僕には
簡単に愛を捨ててしまえる君への答えなど持ち合わせていない
その愛も君は簡単に捨ててしまうだろうか
そうしたら僕は
愛の最終処分場の上で
君が捨てた愛の上で眠ることを想像した
君に愛されるのも悪くなさそうだね
ようやく外した馬蹄をあしらった指輪は
僕の指にうっすらと跡を残して
明日の朝にはゴミ袋に入れられて
ゴミ捨て場で青いゴミ収集車を待つのだろう
やがて僕が眠る地面になるために