都市国家ウェルリト(Werlyt)
イルサバード大陸西部地域は、古代からヒューラン族が暮らす土地として知られていた。しかし諸部族が相争う状態が長く続き、季節の移り変わりのように戦争と平和が繰り返されるようになっていた。
そんな中、西方に活路を見出そうとする部族がギムリトを超えてエオルゼアに攻め込むこともあり、掠奪によって財を成して帰還することもあったが、アンズヘルム・コッターによるギラバニア統一が成し遂げられるとこの動きも鈍化、アラミゴが盾となり彼らの攻勢を跳ね除けることになった。
こうして西方進出が失敗に終わり部族間抗争によって各勢力が疲弊する中、近東のコルヴォ地方から流れてきたアウラ族の集団が、ヒューラン族の一部族と結ぶことで瞬く間に周辺部族を蹴散らすこととなり、こうして都市国家「ウェルリト」が建国された。アウラ族は魔法や錬金術の知識に優れていたとはいえ、数的に圧倒的に不利な立場を踏まえて王位を求めず、同盟者であるヒューラン族の部族長を王位に推挙した。こうした経緯もあり、ウェルリトのヒューラン族には、アウラ族を「力強い味方」と考えるものもあれば、「異邦の侵略者」と見るものもいて評価が安定しないという。
しかし新興国家ウェルリトの統治は長続きせず、魔導改革により軍事国家へと変貌を遂げたガレマール共和国が破竹の勢いで進撃を続け、コルヴォ地方に続いてウェルリトを併呑した。以後、ウェルリトはガレマールの属州としてその広大な版図に組み込まれることとなった。
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ガレマール統治下において、ウェルリトは食料および鉱物資源の生産地と位置づけられ、鉱山の機械化といった魔導技術の恩恵に与ることもあるにはあったが、それは搾取の手段でしか無く、ガレアン人が富むことはあってもウェルリト人が富むことはなかった。
そうして30年ほどが経過した頃、ウェルリト人にとって千載一遇の好機が訪れる。ガレマール帝国軍が第二期東州遠征に着手し、戦力を東方に移動させ始めたのだ。ウェルリトからも駐留部隊の何割かが去ると、反帝国組織が一斉に武装蜂起、総督府を占拠したのであった。ところが独立の夢は幻のごとく霧散してしまう。当時30代であった若きガイウス率いる帝国軍部隊が電撃的な再侵攻を成功させ、ウェルリトの都を瞬く間に攻め落としてしまった。そしてガイウスが新提督に就任。以後、ウェルリトは彼の手で統治されてゆくことになった。
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新提督となったガイウスは、これまでの苛烈な搾取がウェルリト人の反乱を生んだと分析すると、徹底した改革を断行。出自を問わず能力あるものを登用し、特に文官には地元をよく知るウェルリト人官僚を多く起用した。また積極的に富の再分配を行い、街道や橋梁、港湾設備といったインフラを整備するとともに、属州人にも義務的な教育を施す制度を施行した。ガイウスによる統治の間にウェルリト人の識字率は飛躍的に向上した。しかし善政を敷いていたガイウスが本格的な西方侵攻に際して総督の任を解かれてしまった。後任は幾度か交代が繰り返された後、再編されたばかりの第Ⅶ軍団を率いるウァレンス・ヴァン・ウァロが着任、彼の統治下でウェリトの暗黒時代が幕を開けることとなる。
状況はガイウス着任前に逆戻りするどころかさらに悪化し、ささいな理由で属州民の強制連行や処刑が繰り返され、「羽振りが良いのは葬儀屋のみ」と言われるほどの惨状となった。